お知らせ

冠れん縮性狭心症と診断された。日常生活で気をつけることは?(質問)

冠れん縮性狭心症は以前のWebでも記載したように、冠動脈の過収縮により一過性の冠血流の低下がおこり、それにより心筋の虚血が生じるものです。冠動脈のれん縮は心臓カテーテル検査を施行した場合、心筋虚血の徴候(狭心痛など)を伴う冠動脈の一過性の完全または亜完全(>90%狭窄)閉塞と定義されます。冠れん縮は一過性の狭心症発作のみならず心筋梗塞や突然死(夜間・不整脈の関与が考えられる)への関与が明らかあるいは示唆されており危険な現象です。冠れん縮は種々な程度の冠動脈の動脈硬化部位に発生します。したがって冠れん縮性狭心症と診断された人は動脈硬化進展に寄与する因子を良好にコントロールする必要があります。それは高血圧、脂質の異常、糖尿病、肥満、喫煙などです。動脈硬化とは直接的な関係はないものの飲酒、過労、ストレスも冠れん縮をひきおこし、注意が必要です。喫煙は冠れん縮性狭心症のリスクであることは確立されています。そして喫煙はその習慣の長さよりも、1日の喫煙本数が虚血の発症と密接に関連し、20本/日以上では心筋梗塞発症が約3倍以上に、そして心血管死亡は約2倍に増加します。さらに受動喫煙によって、非喫煙者の冠動脈疾患による死亡は増加するのです。一方、禁煙により虚血性心疾患の罹患率や死亡率は低下します。したがって禁煙は非常に重要です。
高血圧は冠れん縮性狭心症の発症との関連は明らかではありません。しかし動脈硬化の進展による虚血性心疾患の予防には最も重要な危険因子の一つとされています。したがって血圧の管理は重要であり、降圧薬の中には冠れん縮を予防する薬があり、その服薬は有効です。肥満は高血圧、糖尿病、脂質の異常を随伴し、健康障害をきたすことが多く注意が必要です。虚血性心疾患の予防の観点から米国ではBMI(肥満指数)21〜25が望ましいとされています。糖尿病(耐糖能障害)は冠れん縮性狭心症との併存率が高いことは報告されています。食事療法に加えて運動療法(早足歩行、ジョギングなど)をおこなうことは発症予防に有効とされ、服薬と伴の血糖の管理は推奨されています。脂質異常症の人にはスタチン系の薬剤(多くの人が内服している)の服用がコレステロールの低下と伴に冠れん縮性狭心症発作予防に有効であることが報告されています。
飲酒は冠れん縮性狭心症のリスクであり、常習かつ多量飲酒の人は危険です。アルコールはマグネシウムの尿排泄を促進し、それによるマグネシウムの欠乏が冠れん縮に寄与していることが示唆されています。実際、飲酒後の冠れん縮発作のある人ではマグネシウム欠乏の程度が高いとされ、また冠れん縮性狭心症の人の突然死は深酒の翌朝におきやすいとされています。したがって冠れん縮性狭心症の人はアルコール制限は重要であり、制限できない人は禁酒の指導をおこなわざるをえなくなります。
精神的ストレスは冠れん縮性狭心症に大きく関与しています。実際ストレスが契機となって冠れん縮性狭心症発作の重積をきたす人は多く認められます。過換気により冠れん縮が生じることは知られていますが、ストレスは過換気状態を作りやすいため、注意が必要です。運動や趣味などその人に合ったストレス発散やリラクゼーションの場を持つことが必要です。
今回冠れん縮性狭心症の人に気をつけてもらいたいことを私の知識の範囲でお答えしました。以前のWeb記載も参考にして下さい。

お知らせの一覧を見る