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潜因性脳梗塞とは

脳梗塞のおもな病型はアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓、ラクナ梗塞の3つがあり、これ以外の原因としては、色々な病態で生じる塞栓症(胸部大動脈の動脈硬化の強いアテロームという病巣からの血栓の剥離など)も含まれます。一方で、さまざまな検査をおこなっても原因が不明なことがあり、これを潜因性脳梗塞とよびます。したがって、潜因性脳梗塞の診断は、原因を特定できる脳梗塞を除外することによってなされます。
潜因性脳梗塞の多くは検出することができない発作性心房細動が原因と考えられています。塞栓源不明脳塞栓症(ESUS)という用語がありますが、これは脳の塞栓症と診断されるものの、原因となる塞栓源が認められないものであり、ゆえにESUSも潜因性脳梗塞の中に含まれる病態です。潜因性脳梗塞の診断は(他の脳梗塞もそうですが)、医療面接・身体検査などで脳梗塞が疑われた場合、最初に脳の画像検査をおこないます。MRI、それができない場合はCTが代用されます。それで脳梗塞と診断された場合、潜因性脳梗塞のほとんどは心原性、そしておもに心房細動(AF)による心原性脳塞栓と考えられるため、その次にはAFの検出のため長時間心電図やイベント心電図などの心電図モニタリングの施行が必要となります。
そして、それと同時に心エコー図検査(経胸壁、時には経食道心エコーの施行もある)で心臓内の血栓の有無についても評価します。これらで異常が検出されなかった場合、首の動脈の血栓の有無あるいは動脈の狭窄の有無を評価するために、頸動脈エコーなどをおこないます。それでも異常が検出できなかった場合は、下肢静脈の深部静脈血栓症からの塞栓による梗塞(奇異性脳塞栓という。発症機序は略)の可能性も考え(原因としては少ない)、下肢静脈エコーの施行も考慮されます。さらには異常が検出されない場合、大動脈CTで上行大動脈の壁に付着している血栓の有無の評価もおこなわれます。
これらの検査を経ても原因が特定できなかった脳梗塞を潜因性脳梗塞として診断します。潜因性脳梗塞の慢性期治療は脳梗塞再発予防のため抗血小板薬(血液をさらさらにする薬)の服用をしていただくようになります。しかしAFが上記の検査で検出された場合は抗凝固薬の服用をしていただくことも考慮されます。(急性期の治療は他の脳梗塞と同様、入院の上リハビリも含めしていただくことになります。無症候性脳梗塞を除く)
以上、潜因性脳梗塞の概略を説明しました。

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