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閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を合併した高血圧の特徴は?(質問)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は夜間睡眠中に、呼吸の吸気時に上気道の虚脱による閉塞で気流の停止が生じ、そのため周期的に酸素の低い病態を繰り返す症候群です。OSASは夜間の心臓突然死や冠動脈疾患、心不全などの循環器疾患ならびに無症候性脳梗塞を含む脳血管障害のリスクとなります。さらにOSASは高血圧の成因の一つで、二次性高血圧のもっとも多い要因であり、治療抵抗性高血圧となることがしばしば認められます。したがって高血圧患者さんはOSASであるかを知られることはきわめて重要です。
OSASは肥満や加齢により増加します。しかし日本においては小顎症などの顔面骨格の人、扁桃の肥大などによる非肥満の人にも多くみられます。昼間の眠気、集中力の低下、うつ状態などの自覚症状を生じることも多いですが、無症状で家族からのいびきや無呼吸を指摘されることも多いです。また高血圧で夜間尿、夜間の呼吸困難(窒息感)、心不全、夜間発症の脳心血管系の病気(急性心筋梗塞、脳卒中、大動脈の解離など)の既往や、治療抵抗性高血圧、特に治療抵抗性の早期の高血圧、さらに正常の血圧にもかかわらず心臓の肥大を指摘された人などは、OSASが積極的に疑われます。
OSASの診断と治療に必要な重症度分類は睡眠ポリグラフィー(PSG)でおこなわれます。それにより中等度や重度のOSASと診断された人は、CPAP(持続陽圧呼吸)という装具を装着する治療が施されます。OSASの人の高血圧は昼間の血圧上昇に加え、夜間高血圧・ノンディッパー型(夜間の血圧が昼間覚醒時と比較して0〜10%低下する。正常は10〜20%低下する)を示すことが多く、家庭血圧では早期高血圧を示すことが多いとされています。夜間高血圧は無呼吸などにより血圧は変動し、夜間発症の脳心血管疾患の誘因となる可能性があります。これらの血圧の変動は自律神経(交感神経)の活発化、酸化ストレスの増加などが複合的に関与しています。
OSASは生活習慣と深く結びついたものであるため、まず生活習慣の改善が必要となります。それは減塩をおこない、肥満者では減量を推進し、また喫煙や就寝前の飲酒はしないようにします。実際、高血圧でOSASを合併した肥満の人ではCPAPに食事療法による減量をおこなった人が、CPAPあるいは食事療法のみをおこなった人とくらべ有意な降圧効果を認めています。上記記載のように重度のOSASを合併したI度、II度の軽症・中等症高血圧の人は基本的にCPAPによる治療が優先されます。III度以上の重症高血圧の人ではそれに薬物療法が必要となることが多いと思われます。これにより大部分の人で降圧効果が認められ、夜間血圧がノンディッパーからディッパー(正常型・上述)に移行し、夜間血圧の変動も軽減し、脳心血管予後も改善することが多いとされています。CPAPは4時間以上の装着が上記に貢献すると報告されています。CPAP療法が施行できない人は口腔内装具(歯科口腔外科で作れる)も有用であるため、その科への紹介も考慮されます。OSASに対する薬物療法は特定の薬の有用性を示すものはなく、その人の状態・症状(肥満・心不全・治療抵抗性など)を考慮し、それらに対して有用と思われるものを服用していただき効果を検証することになります。
以上、OSAS合併高血圧の概略を記載しました。ご質問の方参考にしてください。

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