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非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は心臓血管疾患の高リスク!

近年、我が国ではライフスタイルの欧米化による肥満人口の急激な増加に伴い、非飲酒者(ここではエタノール換算で男性30g/日未満、女性20g/日未満とする)において内臓肥満、インスリン抵抗性(2型糖尿病をはじめとする糖代謝の異常と強く関連する)を主たる基盤として発症し、メタボリック症候群を高率に合併する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の人が急増しています。
NAFLDは、一般に非進行性の病態である非アルコール性脂肪性肝(NAFL)と、肝臓の組織で線維化がおこり、肝硬変・肝細胞癌に進行しうる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からなります。NASHの人は、NAFLDの人の約10〜20%程度いるとされています。最近では、NAFL、NASHは同一の病態の別時相と考えられており、NAFLD全体からは平均約15年の経過で5〜8%の人が、NASHからは平均約8年の経過で10〜20%の人が肝硬変に進行し、肝硬変の人は平均約2%の割合で肝細胞癌を発症するとされています。
肝臓病学的にはNAFLDの概略は上記ですが、今回、NAFLDを取り上げたのは、近年NAFLDが動脈硬化性心疾患(ASCVD)発症及び死亡の高リスクとなることが海外から多く報告されてきているからです。冒頭で記したように、NAFLDは肥満との関連が強く、肥満はメタボリック症候群の主要な症候です。またNAFLDは、インスリン抵抗性を基盤とすることを多く認めます。この二者はご存じのように、ASCVDの主要なリスクとなります。したがってNAFLDがASCVDのリスクとなることはご理解できると思います。
事実海外からは、NAFLDの人は、そうでない人と比べてASCVDあるいは心臓血管疾患(CVD)の発症が2.05倍多いと報告があります。その後もNAFLDの人、肝硬変になったNASHの人は、そうでない人と比べて1.35倍、2.11倍CVDの発症リスクが高いとする報告など多くの研究報告が相次いでされています。
一方、心臓CTによる研究では、NAFLDの人では冠動脈の高リスクなプラーク(動脈硬化の強い病巣)を約60%の人で認め、NAFLDでない人では約20%にしか認めなかったと報告しています。全身の動脈硬化を反映するとされている頸動脈内膜のプラークの発症での研究では、NAFLDの人ではそうでない人の約1.7倍のプラークの発生リスクがあると報告しています。さらに、末梢の血管を研究した報告では、動脈硬化が約1.6倍、冠動脈の硬化が約1.4倍、血管の内膜の機能の障害が約3.7倍、NAFLDの人の発生リスクが高いとしています。
このように、NAFLDはその存在によりASCVDあるいはCVDの合併がより高率となることが報告されています。しかし、日本人を対象としたNAFLDの人のCVDの発症や死亡のリスクを検討した大規模な研究はまだ報告されていません。したがって、それらの報告やNAFLDの人の日本人におけるCVDリスク上昇の機序の解明などが待たれるところです。
NAFLDは、ASCVDの高リスク病態であることは間違いないようです。NAFLDと診断されている人は、特に留意してください。

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