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血管性認知症

血管性認知症とは、脳の血管障害が原因となって生じる認知症です。脳の血管障害とは、脳梗塞(単一な病変あるいは大小の脳梗塞の集合など)、脳出血、くも膜下出血、あるいは他の原因による脳の血液の灌流の不全やそれによる低酸素によるものです。血管性認知症は、アルツハイマー型認知症と共通のリスクをもつことから合併しやすく、日本からの報告では約5%あり、混合型認知症とされています。脳血管障害はアルツハイマー型認知症の進展に促進的に作用するとの複数の報告があり、脳血管障害発症予防は重要なことです。
血管性認知症は、脳卒中発作の後、またはそれに随伴して階段的に認知機能障害が増悪することが典型的です。血管性認知症は非認知症の人とくらべて生命予後は不良です。アルツハイマー型認知症の人と比べても有意に予後は不良との報告はありますが、そうでないとの報告もあり、一定はしていません。
血管性認知症のリスク因子は加齢、運動不足、脳卒中の既往(特に再発性)高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、心房細動、喫煙などがあります。特に中年期の高血圧は血管性認知症の強いリスクであり(非血管性認知症に対しても同様)、その管理は非常に重要です。高齢期の血圧と血管性認知症リスクは一定な結論は得られていませんが、血管の管理により認知機能を悪化させるという報告はなく、血圧の管理(降圧薬の服用などによる)は推奨されています。糖尿病は脳卒中のリスクとなりますが、血糖のコントロールのみで脳卒中の再発抑制効果はなく、高血圧など他のリスク因子と併せて管理することが重要となります。脂質異常症の治療(俗称スタチンと言われている薬の服用)は脳卒中の発症を17%減少させると報告されています。そして効力の強いスタチンの1年以上の服用が認知症の新規発症を約30%低下させたとの報告もあり、興味深いものです。
喫煙はアルツハイマー型認知症とともに血管性認知症のリスクであり、その相対危険度は1.78倍と報告されています。したがって、禁煙は重要です。運動(身体活動)は散歩をふくみ血管性認知症の発症リスクが減少することが示されており、適度な身体活動は推奨されます。食生活においては、抗酸化物質(ビタミンE、C)、魚由来の脂質(脂肪性の魚の摂取)は血管性認知症に対して保護的に働きますが、揚げた魚、ホモシステインの上昇、葉酸やビタミンB12の低下は発症のリスクとなります。やせと肥満はともに血管性認知症発症と関連していることは明らかとなっています。特に肥満に関しては、約35年の観察をおこなった研究では血管性認知症の発症リスクを約5倍上昇させたと報告されています。したがって、中年期からの継続的な体重管理(肥満予防)は重要と考えられます。心房細動はさまざまな機序で認知症の発症リスクを高めるとされており、脳卒中を伴う場合、リスクが2〜3倍に高まると多くの報告があります。
血管性認知症の機能障害に有効な薬は、アルツハイマー型認知症などに使用される4種類の薬がその服用により認知機能の改善が認められ、有用とされています。(血管性認知症に対する服用は医療保険の適用とはなりませんが)また、イチョウ葉エキスは血管性認知症に有用との報告もあります。
以上、今回は血圧など生活習慣病が原因となって生じる血管性認知症を概説しました。ご留意ください。

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