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心房細動を発症した(1回)、予防する方法は何か? 父も心房細動(質問)
心房細動とは、心房内に流れる電気信号の異常により、心房が痙攣したように細かく収縮し、そのため、心臓の拍動数や心臓から送り出される血液の異常が生じる状態です。このため、動悸、労作時の息切れ、めまい、けん怠感などが生じます。しかし、心房細動を生じても約50%の人が無症候であったという報告もあり(特に75歳以上の高齢者、男性、慢性腎臓病(CKD)、脳卒中の既往のある人などが挙げられている)、無症候の人が多いことは明らかにされています。
心房細動は、@初めて診断された心房細動 A発作性心房細動 B持続性心房細動 C長期持続性心房細動 D永続性心房細動 に分類されます。@は過去に診断されたことがなく初めて心電図に確認されたもの Aは治療の有無にかかわらず7日以内に正常の拍動(洞調律という)に復するもの Bは持続が7日を超える心房細動 Cは1年以上心房細動が持続しているが、洞調律への復帰そしてそれを維持することが考慮できるもの Dは洞調律への復帰・維持を考慮できないもの。
@はそれが7日を超えて持続していると判断された場合、自然に洞調律に復帰する確率は極めて低いです。一方、心房細動が一過性で自然に洞調律に復帰した場合、約半数の人は数年間は再発しないとされています。Aの場合、治療をした場合、それに対して抵抗性で約6%の人が持続性心房細動に移行したとの報告があります。Bは過去の心電図による記録がない場合、Cとの正確な区別は不可能です。Dの人は心房細動であることを受容されており、治療として心拍数の調節がおこなわれることが多いです。心房細動はAを繰り返し、BあるいはCへ移行することが多いとされています。
時には、Aから発症する人も見受けられますが心房細動の有病率は年齢が進むにつれて上昇し、心不全、死亡、脳卒中、心筋梗塞などの心血管有害事象のリスクと関連し、その予防(修正可能な)管理は重要です。以下に修正可能な心房細動のリスクを記載します。
(a)高血圧:高血圧はもっとも広く受け入れられている心房細動のリスクであり、重要な因子とされています。持続的に上昇した収縮期血圧(過体重が加わるとさらにリスクは上昇する)や長期の降圧薬による治療歴などの経過がリスクと関連していると報告されています。
(b)糖尿病:これに関しては耐糖能障害を有する人の空腹時血糖値が18 mg/dL増加すると心房細動発症リスクが33%増加するとの報告があります。しかし、心房細動と糖尿病との明確な関連を示す研究報告は多くはありません。
(c)肥満:肥満指数(BMI)の上昇は心房細動との有意な関連が認められています。修正可能なリスクの中で、心房細動の生涯リスクに影響を及ぼすもっとも顕著なリスクは肥満であるということは重要です。逆に、BMIが低下すると心房細動のリスクは減少することは認められています。
(d)睡眠呼吸障害:心房細動発症リスクとの関連を示唆する報告は増加しており、それらによると睡眠呼吸障害の重症度が高いほど心房細動リスクが高くなることが明らかにされています。
(e)尿酸:心房細動との関連を示唆する研究は少ないですが、わが国からの報告では、血清尿酸値が高いと心房細動発症率が高くなる、あるいは高尿酸血症の人で尿酸降下薬を内服していない人は心房細動の独立したリスクであったとの報告がされています。
(f)喫煙:現在の喫煙者およびブリンクマン指数(一日に吸うたばこの本数×喫煙年数)が800以上の喫煙者は心房細動の新規発症の独立したリストとされており、また心房細動で喫煙者の入院および死亡のリスクは高いことも報告されています。
(g)アルコール摂取:アルコール摂取の増加とともに心房細動のリスクが増加することは示されています。たとえば、アルコール摂取量が1日10g増加するごとに新規心房細動発症リスクが5%上昇すると報告した研究も見受けられます。
上記の修正可能な心房細動とは別に、遺伝的なリスクが最近明らかになっているのです。すなわち、修正可能なリスク因子が少ない場合であっても、遺伝的なリスクが高い場合は、心房細動発症のリスクは高いことが示されています。
心房細動の人の生命予後は良好ではなく、冒頭で記したように心血管死(心不全がそのうち最多)、突然死、急性心筋梗塞、脳卒中などで亡くなられる人が多く、また、認知症および認知機能低下のリスクが高いことも示されています。
したがって、心房細動の予防および包括的管理(治療は心拍数調節・抗凝固療法・洞調律復帰療法(薬物・カテーテルアブレーション)などあるが今回は記載しない)は非常に重要となります。
質問の方、上記修正可能なリスク因子があれば、まずはそれを修正し、心房細動発症時に無症候であったのなら毎日検脈(自分で脈をとる)をしてみてください。それで異常があれば、さらなる検査・加療が必要と考えられます。