お知らせ

腎血管性高血圧

腎血管性高血圧(RVHT)は、腎動脈の狭窄あるいは閉塞による高血圧です。治療抵抗性高血圧や腎機能障害の原因ともなり、それによる腎機能障害は虚血性腎症と呼ばれ、末期腎不全の約10%を占めるとされています。
RVHTの原因は、中〜高年者では粥状動脈硬化性(動脈の内壁に脂肪やコレステロールなどが沈着し、動脈が細くなる状態)、若年者では線維筋性異形成(動脈が狭窄と拡張をきたす非動脈硬化性かつ非炎症性の病態)によるものが多く、大動脈の解離、血栓・塞栓、先天性の奇形などもあります。粥状動脈硬化性では、全身の動脈硬化が進行していることが多く、冠動脈疾患合併高血圧、下肢閉塞性動脈硬化症、脳動脈瘤では、腎動脈の狭窄(50%以上)がそれぞれ10%、25%、33%認められたとする報告もあり、加齢や脳心血管の合併とともに多くなります。RVHTの有病率は高血圧患者の約1%とされており、線維筋性異形成は一般住民の約0.4%にあるとされています。
RVHTの起因となる腎動脈の狭窄は片側性が多いですが、両側性のことも少なくはありません。狭窄部位は粥状動脈硬化性では腎動脈の起始部に、線維筋性異形成では腎動脈の中〜遠位部に多く認められます。
高血圧の人でRVHTを疑い、診断検査をする手掛かりとなるものは以下のようなことがあげられます。
・若年で発症の高血圧
・治療抵抗性高血圧
・ある種の降圧薬の服用開始後の腎機能の悪化
・説明のつかない腎機能障害、腎臓の萎縮または腎臓の大きさの左右差(画像検査での)
・説明のつかない突然発症した肺水腫
・脳心血管病の合併
・夜間多尿 など。
診断は、上記のような病歴・臨床的な症状により推測し、主として画像検査を用いておこなわれます。画像検査は、腎動脈超音波は診断能が高く、非侵襲的で評価が可能であり、第一に考慮される検査です。腎動脈超音波が種々の条件で施行できない、または同検査で狭窄が確定できない場合には、MRA(MRIによる動脈検査)、CTA(CTによる動脈検査)による評価が考慮されますが、造影剤を使用したMRAは腎機能障害のある人では施行できません。CTAも同様に腎機能障害のある人ではその程度が考慮され、造影剤の使用量を決定したうえでの施行あるいは機能障害の強い人では施行できません。上述の検査で狭窄が明らかでない場合、もしくはRVHTの治療として経皮的腎動脈形成術(PTRA:体内にカテーテルを挿入して腎動脈狭窄部を拡張する)を検討する場合には、カテーテルを用いた大動脈造影あるいは左右の選択的腎動脈造影が考慮されます。RVHTの他の診断法として血液中のホルモンを測定することなどもおこなわれますが、これらによる診断能は画像検査に基づく診断と比較すると精度がおとるため、補助的に使用することが望ましいとされています。
RVHTの治療には、降圧薬服用を中心とした薬物療法、PTRAまたは外科的な血行再建手術、腎臓の摘出術があります。このうち粥状動脈硬化性のRVHTでは、PTRAは薬物療法と比べて降圧効果、腎機能の推移、脳心血管病発症予防のいずれにおいても優れた治療効果は示されなく、むしろPTRAの施術時の合併症発症の危険性が指摘されており、したがって、薬物療法単独の施行が現時点では支持されています。一方、線維筋性異形成によるRVHTでは、PTRAは施行成功率が高く、粥状動脈硬化性によるRVHTと比べて高い降圧効果や降圧薬服用の減量や中止が期待でき、積極的に検討されています。降圧効果は、若年の人や高血圧罹患歴の短い人で大きいことが研究報告で示されています。ただし、線維筋性異形成でのPTRAは施術後(腎動脈狭窄部拡張後)の再狭窄は少なくはありません。外科的な血行再建手術はその施行は減少していますが、PTRAによる血行改善が困難な場合や、PTRA後に再狭窄を繰り返す場合などでは、その施行が考慮されます。腎臓摘出術は減少しています(世界的にも)。
以上、RVHTの概略を説明しました。

お知らせの一覧を見る