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中性脂肪が高い。病的意義は?

中性脂肪(TG:トリグリセライド)はバター、クリームなどの乳製品、牛肉、豚肉など脂質の多いもの、菓子類、果物、ジュースなどの糖質の多い物、酒類などのアルコール飲料に多く含まれています。
TGと冠動脈疾患との関連はわが国を含め多くの報告があり、有意な関連を認めることが示されています。そしてこれらの研究報告の多くで、TGの増加は脳梗塞のリスクとなることも報告されています。すなわち、TG増加はLDL-コレステロールとともに動脈硬化性疾患の真のリスクであることが確立されています。それではTGの血液中の増加は、どれぐらいから冠動脈疾患発症などのリスクとなるのでしょうか。
血清TGは空腹時で150mg/dl以上の人で冠動脈疾患発症のリスクが、それ未満の人とくらべ約3.7倍で増加するとの報告や、150mg/dl以上で冠動脈疾患発症のリスクが急激に増加すると報告されたことなどによりわが国においては、米国などの他の国と同様、空腹時血清TG値を150mg/dl以上を高TG血症とし、冠動脈疾患など動脈硬化性疾患の発症リスクとしています。しかしTGが高値かどうかを実際の診療の場で検査(採血による)する場合は、空腹時よりも食後数時間後からの検査(随時という)が多くおこなわれることも事実です。
そしてこの随時のTGの方が空腹時TGよりも心血管疾患発症の予測値が高いとする報告もされています。随時TG値が167mg/dl以上で冠動脈疾患の発症・突然死のリスクが約3倍に上昇する、随時TGが210mg/dlを超えると、150mg/dl〜170mg/dlの人と比べその値の増加に比例して心血管疾患発症リスクが増加するなどは日本からの報告です。一方、同報告では65歳以上の人では随時TG値が低いほど心血管死亡リスクは増加し、65歳未満の人では随時TG値が高いほど心血管死亡リスクは増加したとも報告しています。以上よりわが国では欧米調査と同様随時の血清TG値は175mg/dl以上を高TG血症としています。実際の診療の場で、TG高値で薬物の服用の対象となる人に、その服用による効果を解析した研究では、約20%の人で心血管イベントの発症の抑制効果が認められています。すなわち空腹時あるいは随時TGが一定のレベル以上に上昇すると動脈硬化性心疾患発症のリスクが上昇すると前記したことを示唆すると考えられます。
以上、血清TG高値は動脈硬化性疾患の真のリスクです。血清TG高値の人は肥満の人は減量・身体活動の増加・冒頭にあげた食物の減量などの生活習慣の改善をされることが最初に必要なことです。その上で薬物療法を考慮することになります。

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