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高血圧性脳症

高血圧性脳症とは、高血圧緊急症に該当し、急激または著しい血圧の上昇により脳が血流を自動調節する上限を血圧が超え、そのため必要以上に脳の血流量が増加し、血液脳関門(血液から脳の組織への物質の移行を制限する仕組み)が破綻し、血液(血管)が原因で脳浮腫を生じる状態です。
長期間罹患している高血圧者では220/110mmHg以上、正常血圧の人では160/100mmHg以上で発症しやすいとされています。高血圧性腎障害で出現する蛋白尿や高血圧性眼障害である網膜症のない人にもみられます。
高血圧性脳症はもっとも重篤な緊急症で、血圧の高度な上昇によって、脳、心、腎、大血管などに急性の障害が生じ進行します。したがって適切な治療がおこなわれないと、脳出血、意識障害、昏睡、死に至ります。
悪化する頭痛、悪寒、嘔吐、視力障害、意識障害、けいれんなどを伴いますが、巣症状(脳機能が障害されることで出現する症状。失語など)が出現することはまれです。画像所見では、MRIで頭頂葉ー後頭葉を中心に可逆性の浮腫性変化(可逆性後部白質脳症)の所見がみられることが多いとされています。この所見は子癇(主に妊娠20週以降の女性に初めておこるけいれん発作。妊娠高血圧腎症の女性に多い)や免疫抑制薬を使用している人が血圧上昇を発症した場合に認められることもあります。この場合は典型的な高血圧性脳症に比べて血圧が異常な高値でない場合も多いとされています。しかしこのことは、高血圧性脳症は血圧の絶対値だけではなく若年女性や子供のような基礎の血圧が低い人の場合であっても、急激な血圧の上昇によりこの病態を引きおこす可能性があることを示しています。
高血圧性能症は緊急に降圧する治療が必要です。しかし、脳の血流の自動調節能が障害されているため、急激で大きな降圧は脳の虚血に陥りやすく、さらに他臓器においても血流の灌流圧の低下による虚血性臓器障害(心筋梗塞、腎機能障害など)を引きおこす可能性が高く認められます。したがって降圧の程度や速度が予測可能で、かつこれらの調節が可能な薬を静脈内に投与することがおこなわれます。最初の2〜3時間で25%程度の血圧の低下をめざし、その後細心の注意を払い、2日前後の時間をかけて140/90mmHg未満まで降圧します。そしてその人の状態が安定し持続するのを見極めて経口薬へと切り替え、最終的に合併症がなく良好な血圧のコントロールの維持を目指しおこなうことになります。
以上、高血圧性能症の病態、治療を概説しました。まれな病態ではありますが、出現すると生命の危険を伴います。ご留意ください。

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