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HDLコレステロール

HDLコレステロール(HDL-C)は、高比重リボタンパクで、血液中の余分なコレステロールを回収し、また血管壁にたまったコレステロールを取り除き、肝臓へ戻す働きをします。それにより動脈硬化を抑制するため、善玉コレステロールともいわれています。
欧米では1990年頃までにHDL-C値が動脈硬化性疾患を有する人では低下し、動脈硬化性疾患の罹患率とHDL-C値は負の相関関係を示す、すなわちHDL-Cの低値は冠動脈疾患や脳梗塞の発症リスクとなり、逆に高いほどリスクは減少することが明らかにされていました。たとえば、HDL-Cが1mg/dl低下すると冠動脈疾患の発症が2〜3%増加することなどです。一方、日本では1990年代にHDL-C値が40mg/dl以下の人では41〜55mg/dlの人と比較すると冠動脈疾患や脳血管障害の合併率が上昇すること、HDL-C値が40mg/dl未満であると、冠動脈疾患や心筋梗塞の発症率が上昇することなどが報告され、HDL-C値が40mg/dl未満が低HDL-C血症との診断が採用されました。
その後、地域、職域での研究や大規模な疫学研究で、HDL-C値が全死亡や脳卒中死亡とも有意に負の関連を示し、40mg/dl未満で冠動脈疾患などの発症リスクが上昇することが確認されました。また脂質異常症の人が服用する薬を用いた研究では、HDL-C40〜49mg/dlの人達と比べ、40mg/dl未満の人達は冠動脈疾患の一次予防では1.3倍のリスクとなり、二次予防では1.6倍のリスクとなることが示され、それらなどより低HDL-C血症はHDL-C値が40mg/dl未満が妥当とされています。なお、日本を含む他国にわたる研究では、HDL-Cの低値はLDL-C(動脈硬化をすすめ、悪玉コレステロールといわれる)やTG(トリグリセライド・中性脂肪)が正常域にあっても冠動脈疾患のリスクとなることが示されています。
一方、HDL-Cが90mg/dl以上と極端に高くなるコレステリルエステル転送蛋白(CETP)欠損症の人では、HDL-Cが40〜59mg/dlの人と比べ、冠動脈疾患や脳梗塞の死亡リスクが有意に上昇することが報告されています。この報告では、90mg/dl以上とHDL-Cが高い人は飲酒者に顕著に認められています。(現在でも飲酒によりHDL-Cが上昇することは示されている)
最適なHDL-C値を検討した欧米での最近の報告では、HDL-Cと動脈硬化性疾患の関連はU字カーブを描き、動脈硬化性疾患の発症リスクがもっとも低くなるのは77mg/dlであるとしています。上記などより日本においてはHDL-Cは40〜90mg/dlが正常の基準とされています。なお女性は一般的に男性よりもHDL-Cは高値を示しますが、HDL-Cの性差による相違と男女別の冠動脈疾患発症との関連については十分な研究報告はなく、したがってHDL-Cの基準は男女とも同じとされています。

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