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睡眠時無呼吸 併発する不整脈

睡眠時は、正常な睡眠で器質的心疾患を伴わなくても、徐脈性不整脈を認めることはまれではありません。洞性徐脈は、睡眠中におこる徐脈性不整脈のなかでもっとも頻度の高いものです。その他、洞静止、洞房ブロック(名称を覚える必要はない)などの徐脈性不整脈も睡眠中に認められます。これらの不整脈は若年者やアスリートでとくに頻度が高く、中高年になるにつれて低下するといわれています。睡眠中の徐脈の機序としては、ノンレム睡眠時の交感神経活性の減弱と副交感神経活性の亢進(自律神経の正常な活動)がいわれています。睡眠中の徐脈の多くは生理的な反応であり、無症候性であるため、治療の必要はありません。したがって、睡眠中に生じる洞性徐脈や一過性の洞静止などで心拍数が低くなっても、ペースメーカーの植込みはおこなうべきではないとされています。
それでは、睡眠呼吸障害(SDB)では徐脈性不整脈は関連して発症するのでしょうか? SDBを有する人では、おもに無呼吸発作時に徐脈や伝導障害を生じる頻度が高く認められます。また、徐脈を呈した後に頻脈を呈する徐脈頻脈反応を認める人もあり、その場合、無呼吸発作時に徐脈となり、無呼吸発作の終了時に頻脈や高血圧となることが知られています。これは無呼吸発作により低酸素血症が生じ、それに続く覚醒反応のくり返しによる自律神経の緊張の変動のため、また酸素吸入によるものとされています。睡眠時無呼吸発作に伴うこれらの夜間の徐脈性不整脈を有する人は無症状なことが多く、また日中に徐脈が出現することはまれです。したがって、SDBに伴う徐脈性不整脈を有する人では、ペースメーカー植込みよりSDBに対する治療が優先されます。SDBに対する治療により、徐脈性不整脈の頻度が劇的に減少するからです。たとえば重症の洞性徐脈、洞静止、洞房ブロックなどの徐脈性不整脈は、SDBの治療であるCPAPにより72〜89%減少したとの報告があります。その他にも、多数の徐脈性不整脈に対するSDB治療の有効性を示す報告(ペースメーカー植込みの必要がないことを示す報告)があり、つまり、睡眠時無呼吸を合併している睡眠中の徐脈性不整脈を有する人には、無呼吸に対する治療(CPAPや減量)が推奨されます。また、ペースメーカー植込みをおこなわれた人の解析では、その59%の人で検査によりSDBと診断されたとの報告があります。したがって、ペースメーカー植込みを検討されている人は、SDBの高リスク群であり、たとえ無症候性であっても、SDBのスクリーニングをおこなわれることが推奨されているのです。
SDBは頻脈性不整脈も合併します。それには、治療介入を必要としない無症状の心房期外収縮・心室期外収縮から、心臓突然死につながる致死性不整脈などさまざまあります。SDBに合併する上室性不整脈としては、心房細動があります。この合併頻度は経時的に増加します。すなわちSDBの罹病期間が長くなるほど心房細動の合併頻度は高くなります。したがって、心房細動の人はSDBのスクリーニングをされることが重要ともされています。SDBに心房細動が合併した場合の治療は、カテーテルアブレーションが推奨されます。しかし、同治療が成功しても、睡眠時無呼吸に対する適切な治療(CPAP、体重管理、節酒など)がなされていないと心房細動の再発率は高くなることは示されており、すなわちこれらを含めた包括的な治療が重要とされています。
SDBを有する人における心室性不整脈・突然死を検討した報告は多くはありません。しかし、睡眠中の最低酸素飽和度が心臓突然死の発症の独立したリスク因子であることを示した報告があり、重要な報告と考えられます。また、SDBと心臓突然死は年齢、高血圧、心不全、糖尿病、脂質異常症、冠動脈病変、肥満といった共通するリスク因子を有しており、とくに心不全や冠動脈病変の併発が睡眠時無呼吸の人の心臓突然死に関与していることが推定されています。そして、睡眠時無呼吸の人では0時から6時までの間の突然死の発生リスクが高いと報告されています。しかし、突然死を惹起する心室性不整脈は就寝中であり、自覚する可能性は低く、そのため、検査により検出される不整脈の発生頻度は不明なことは重要な問題となります。心臓突然死に対するCPAP治療による予防効果は明らかではありません。その他の併発した心不全に対する治療の突然死予防効果なども明らかなものは認められていません。つまり、現時点では、研究課題となっているのです。
以上、SDBに併発する不整脈に関して概説しました。

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