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脳梗塞・脳出血再発予防に対する血圧管理

脳血管障害の再発予防と血圧との関連を研究した大規模試験などにより、降圧療法は脳血管障害の再発を有位に抑制することが示されています。脳卒中の再発予防と降圧療法を検討した大規模な研究では降圧療法により脳卒中再発が27%減少したことが報告されています。
これらなどによりわが国の高血圧に関するガイドラインでは脳梗塞慢性期における降圧目標値について、両側の頸動脈の高度な狭窄や脳の主幹動脈の閉塞がある人では140/90mmHg未満、両側の頸動脈の高度狭窄や脳の主幹動脈の閉塞がない人では130/80mmHg未満の血圧を目指すという降圧目標が推奨されています。しかし過度な降圧に伴い脳梗塞の再発率が上昇するいわゆるJカーブまたはUカーブ現象の有無は一定した報告はなく、また脳梗塞の再発予防の最適な血圧レベルは確定していません。一過性脳虚血発作(TIA)あるいは軽度の脳卒中において130/80mmHgまでは血圧が低いほど再発のリスクは低下する。血圧が低くコントロールされた人ほど脳梗塞および脳出血の発症率は低く、およそ115/75mmHgがもっとも脳卒中再発リスクが低い。これらはJカーブ現象はみられないとする報告です。
本邦での研究を含む大規模な検討では、130/85mmHg未満では、これらの血圧値より高い群の人と比較して有意に脳卒中の再発が多く、収縮期および拡張期血圧の低下と脳卒中の再発リスクの減少との間に直線的な関連が示されています。
一方でJカーブ現象は存在するとの報告もあります。特に脳の主幹動脈に病変を有する人では注意が必要とされています。たとえば頸動脈に両側性の70%以上の狭窄を有するTIAまたは脳卒中の既応のある人では、収縮期血圧が150mmHg未満の人で脳卒中再発リスクが有意に増加し、頸動脈の片側性の70%以上の狭窄の人では脳卒中の再発のリスクは増加しなかったとの報告があります。また頭蓋内の動脈の血液の灌流障害から検討した報告でも血液の灌流障害のある人では血圧低下(130mmHg/未満)で脳卒中の再発が増加し、灌流障害のない人では血圧の高値が脳卒中再発の増加に関連していたとしています。これらのことは脳の主幹動脈に閉塞や高度狭窄のある人では、個々の病態に応じた降圧療法が必要であることを示しています。
また脳梗塞再発予防などの目的で抗血栓薬を内服している人では、脳出血を発症することが多くこれらの人では130/80mmHg未満の降圧が推奨されています。次に脳出血既応の人の降圧に目をむけると、わが国の研究ではこれらの人は血圧のコントロール不良な場合に再発が多く、特に拡張期血圧が90mmHgを超える人での再発率が高いとされています。また脳出血既応の人では収縮期血圧が120mmHg以上であれば、脳出血の再発予防に降圧されることが有効で、112〜168mmHgの到達血圧値の範囲では血圧が低いほど脳出血の再発が少なかったとの報告があります。
これらの報告・研究などによりアメリカでは脳出血既応の人の降圧目標は130/80mmHg未満を推奨しています。わが国での脳卒中の既応のある人を対象とした研究では、厳格な血圧管理(120/80mmHg未満)ができた人は、通常の血圧管理(140/90mmHg未満)の人と比較して脳出血の発症が顕著に抑制され、脳出血の再発予防における厳格な血圧管理の有用性が示されています。したがってわが国では脳出血既応の人の降圧目標を130/80mmHg未満として厳格な降圧目標は120/80mmHg未満を推奨しています。一方脳出血の再発予防にあたっては再発のリスク評価が重要となります。脳出血既応の人では脳内に微少出血(MBs)の合併が高頻度に認められます。MBsの存在と数は脳出血再発の重要なリスク因子となります。MBsの出現には高血圧と年齢が関連し、糖尿病、低コレステロール血症、腎機能障害との関連も示唆されています。
既応により抗血小板薬や抗凝固薬を服用している人ではMBsが多く認められます。よってこれらの人では脳出血発症のリスクがさらに高くなる可能性があり注意が必要です。
特に我が国においてはMBsの脳出血に対する寄与率が高いため、脳出血再発予防に対する高血圧の厳格な管理が必要となります。
以上今回は脳梗塞・脳出血再発予防に対する血圧の管理・治療について説明しました。

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