お知らせ

糖尿病、睡眠時無呼吸との関連

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と2型糖尿病は、肥満をはじめとする共通のリスク因子を有し、相互に合併することはよく認められます。OSAが2型糖尿病を発症させる機序としては、夜間の間欠的な低酸素血症や睡眠の分断化による交感神経(自律神経)の活動促進などから生じる糖の代謝異常やインスリン抵抗性の惹起によると考えられています。
2型糖尿病の人におけるOSAの合併は、心血管障害の発症と有意に関連しており、海外からの大規模な研究報告では虚血性心疾患1.55倍、心不全1.67倍、脳卒中/一過性脳虚血発作1.57倍、心房細動1.53倍、全死亡1.23倍と有意な発症の増加が報告されています。その他にも同様な報告はあり、これらのことによりOSAを合併した2型糖尿病の人は、心血管疾患の高リスク状態にあります。
したがって、2型糖尿病の人のOSAの合併の有無を評価することは重要なこととなります。
2型糖尿病の人の合併症としての血管障害は上記の大血管障害と細小血管障害があります。OSAの糖尿病性細小血管障害はOSAと2型糖尿病が共通して酸化ストレスに対する感受性を高めることにより発症する可能性が推測されています。OSA合併2型糖尿病の人は約60%に末梢神経障害の合併を認め、これはOSA合併のない人の2.72倍に相当するとの報告があります。また中等度以上のOSAを合併した人の7.6%に糖尿病性骨症、5.2%に糖尿病性網膜症などの細小血管障害を認めたとの報告もされています。さらにOSAの合併により慢性腎臓病の中〜末期の新規の発症が約1.18倍増加したとの報告もあります。したがって2型糖尿病を合併したOSAの人はこれらの心血管疾患(大血管障害)、細小血管障害を抑制する治療及びその効果を検討する必要があります。2型糖尿病を合併したOSAの人の治療としての間欠的陽圧呼吸(CPAP)の糖代謝に対する効果は相反する結果が示されています。すなわち3〜6ヶ月のCPAP使用によるフォローアップでHbA1c(血糖の1〜2ヶ月前からのコントロール状況をあらわす)の有意な低下は認めなかったとの報告。同様なフォローアップで血糖コントロールやインスリン抵抗性の有意な改善を認めたとの報告などです。CPAPの使用による血糖変動に及ぼす効果についても血糖変動の改善の有無は相反する結果が示されており、これらの研究からCPAP単独でほかの要因による血糖に対する影響をうわまわるほどの臨床的効果は期待できるとは考えにくいのが現状です。それに対してCPAPと減量の両者による介入はHbA1cを有意に改善することが示されており、CPAPのみならず生活習慣の是正の必要性が示唆されるところです。
一方2型糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害薬とよばれる薬には2型糖尿病の人の新規のOSA発症のリスクを低下させることが海外の大規模な研究の解析で報告されています。その報告では2型糖尿病の人の新規のOSA発症リスクを52%低下させたとしています。類似な報告も最近日本からもされています。またOSAを合併した日本人の2型糖尿病の人に関する研究ではSGLT2阻害薬投薬前後でHbA1cや体重の低下とともに無呼吸低呼吸指数(AHI)が平均31.9から18.8と有意に減少していたとのことです。
SGLT2阻害薬は新薬ですが、心血管領域、腎臓領域でも注目されている薬でありこの薬の有効性を検証する前向きな研究が期待されるところです。

お知らせの一覧を見る