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冠動脈疾患と高血圧

高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙は生活習慣の改善により修正可能な代表的な冠動脈疾患(CAD)の危険因子です。これらの危険因子すべてを適切に管理することにより、わが国のCADの発症の半数以上を減らすことが可能とされています。今回は冠動脈疾患と高血圧の関係を解説します。高血圧はCADの重要な危険因子です。海外の大規模な研究では血圧が115/75mmHg以上で指数関数的にCADによる死亡を増加させる。あるいは40〜80代の全年齢において血圧が125/mmHg以上、/75mmHg以上あるとCAD死亡が血圧上昇に伴い増加する。とされています。日本における研究でも心血管死亡が最も低い120/80mmHg未満と比較して、中年者(40〜64歳)と前期高齢者(65〜74歳)では120/80mmHg以上、後期高齢者(75〜89歳)では140/90mmHg以上で血圧上昇に伴い心血管死亡リスクが増大しています。高血圧は140/mmHg、/90mmHg以上あるいはその両者(140/90mmHg以上)の場合に診断します。従来正常高値とされていた120〜139/80〜89mmHgの血圧域の人でも120/80mmHg未満の人とくらべ脳心管疾患発症リスクが2倍以上だと大規模な研究解析で示されました。そのため現在では120/80mmHg未満を正常血圧、120〜129/<80mmHgを正常高値血圧、130〜139/80〜89mmHgを高値血圧と血圧上昇の段階による名称を変更しています。すなわち若いころから生涯にわたり120/80mmHg未満の正常血圧を保つような生活習慣を継続することが推奨されています。そして高血圧の人は降圧薬の種類によらず血圧をさげることでCADの発症が減少することが明らかとなっています。たとえば糖尿病や脳卒中の既応のない50歳以上の高血圧の人を対象とした米国での大規模な研究で通常の診察室での収縮期血圧を130mmHg未満を目標にして厳格に降圧された人は、通常に降圧された人と比較すると心筋梗塞、心不全、脳卒中、心血管疾患による死亡が25%減少しており、特に心不全と心血管疾患による死亡の減少が約40%と顕著でした。同研究では75歳以上の高齢な人でも同様の結果となっています。その後の解析による同研究の最終報告でも厳格に降圧された人は、心筋梗塞を有意に28%減少したことが確認されています。
別の研究では収縮期血圧が10mmHg低下するとCAD発症が17%減少したことが報告されています。

高齢な(60〜80歳)高血圧の人を対象とした別な研究は厳格な降圧(収縮期血圧110〜129mmHg)をされた人は、標準な降圧(収縮期血圧130〜149mmHg)をされた人と比較して急性冠症候群の発症を33%、脳卒中、心不全、心血管疾患による死亡を26%抑制したと報告しています。収縮期血圧を5mmHg低下させると高血圧域の人だけでなく正常〜高値血圧の人においてもCADなどの心血管疾患の発症及びそれによる入院のリスクが約10%抑制されたとの報告もあります。以上のことによりCADの一次予防としての降圧の目標は75歳未満の人は原則として130/80mmHg未満、75歳以上の人は140/90mmHg未満(ただし忍容性があれば130/80mmHg未満)とされています。ただし降圧あるいは血管の管理ではまず薬の服用の前、また薬の服用時でも生活習慣の修正(塩分制限、果物・野菜の摂取(カリウムの保給)、コレステロール/飽和脂肪酸摂取抑制、肥満抑制、運動、節酒、禁煙)を継続的におこなうことが必要ですしその事はよくおわかりだと思います。最後にCADの予防において、前記したようにある降圧薬が他の降圧薬より優れているという証明はされていません。すなわち降圧薬の種類にかかわらず上記に記載した血圧値を目標として降圧されることが寛容なのです。

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