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高血圧性腎硬化症

高血圧性腎硬化症は、進行すると糖尿病性腎症(糖尿病が原因となる腎障害)につぐ人工透析の原因の二番目に位置することは知られています。高血圧性腎硬化症は持続した高血圧により生じた腎臓の病気です。すなわち臨床的には高血圧歴を有し、血尿を認めなく、蛋白尿は高度でなく、さらに糖尿病や糸球体腎炎(原発あるいは二次的に生じた腎臓の炎症)の合併を認めない腎機能低下症例を多くの場合同病と診断します。血尿は認めないと記しましたが、顕微鏡的に認める血尿は存在することはあります。しかしその場合も軽度です。尿中の蛋白は時に3g/日以上を呈することはありますが、多くの場合1g/日以下です。また診断時には高血圧を伴わない場合もあり、その場合は過去の高血圧の存在、加齢、虚血(腎臓の)の影響が想定されています。高血圧性腎硬化症は進行すると形態的には腎臓の萎縮を認めます。腎硬化症は病理組織学的に診断することは可能ですが、その場合腎臓の生検という観血的な検査が必要となり、ハードルが高くなり、それにより診断することは他疾患による腎臓の病変との判別が困難な場合を除いては少ないです。
高血圧性腎硬化症の臨床的な経過は緩徐な腎機能障害の進行を示し、末期の腎不全に至るまでは自覚症状には乏しいとされています。生命予後は白色人種やアジア人では不明とされていますが、日本では腎機能低下を認める人ないしは高度の尿蛋白を有する人では、腎臓の長期的な予後は不良との報告はあります。高血圧性腎硬化症の治療目標は、腎機能の低下から末期腎不全への進行を抑制する。そして腎硬化症はその後の経過により脳心管病の発症を多く認めることより、その発症抑制をめざすことがポイントとなります。そのための血圧の降圧目標は以下となりますが降圧目標の設定には蛋白尿の有無が重要となります。蛋白尿がある人では130/80mmHg未満が推奨されます。蛋白尿を認めない人(0.15g/日未満で正常と診断される人を含む)では140/90mmHg未満の降圧が推奨されます。ただし腎機能低下が進行している人(慢性腎臓病〜腎不全の人)では降圧に伴うめまいなどの低血圧に注意しながら130/80mmHg未満を目指すことが推奨されます。これらの推奨根拠は、多くの研究で130/80mmHg未満の厳格な降圧をされた人と、140/90mmHg未満の通常の降圧をされた人では、蛋白尿を合併していない場合、腎機能低下速度、腎代替療法(透析)を必要とする末期腎不全の発症、脳心血管疾患の発症、死亡に関して優位な差は認めなかったが、蛋白尿を合併している人では厳格な降圧された人では上記が優位に少なかったことによります。一方、腎機能が低下している人では厳格な降圧により蛋白尿が少ない人でも急性な腎障害の発症リスクが上昇し脳心血管疾患の発症のリスクは抑制されなかったとの報告も認めます。要は先に記したように慎重な降圧が必要ということなのです。(特に我々降圧医による)降圧薬は蛋白尿を合併した人では合併していない人とくらべ、服用により腎機能低下の進行抑制に優れ推奨されている薬はあります。これに関しては我々降圧医に診察においでになったときに説明します。
以上、高血圧性腎硬化症に関して概説しました。

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