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無症候性高尿酸血症 その対処法(合併症を考慮した)

高尿酸血症は長年持続すると痛風関節炎や痛風結節、腎臓の障害、尿路結石などの尿酸ナトリウム(MSU)結晶が関与する症状が出現してきます。そしてそのなかで痛風関節炎と痛風結節をきたしたものが痛風で、これらのないものが無症候性高尿酸血症として区別されます。痛風関節炎は関節内に進出し沈着していた痛風結節からはがれ落ちた(クリスタルシェディング)結晶を原因とすることが多く、血清尿酸値は高値です。単一の関節炎を呈することが多く、発作(痛風発作)をおこされた人の疼痛は強く、生活の質(QOL)は損なわれます。一方無症候性高尿酸血症においても、症状はありませんが、関節内に痛風結節がかなりの頻度で存在することが、関節内エコーやCT検査で示されているのです。無症候性高尿酸血症は遺伝的素因に生活習慣が加わって発症します。過食(肥満により高尿酸血症をきたす)高脂肪・高蛋白食摂取(含有されているプリン体が多いと血清尿酸値が上昇する。4g数日間摂取で高尿酸血症をきたす。1日の摂取推奨量400mg程度)、果糖摂取(甘味飲料や果物ジュースに多く含まれプリン体分解をきたして血清尿酸値を上昇させる)常習飲酒(肝臓でのプリン体分解を亢進させ、またアルコール飲料は多くのプリン体が含まれる。特にビールは多く血清尿酸値を上昇させる)運動不足(運動は肥満を是正し、血清尿酸値を低下させる。しかし短時間の激しい運動では血清尿酸値は上昇する。有酸素運動がよい。)などの生活習慣は高尿酸血症の原因となるばかりではなく、肥満、メタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの高尿酸血症の合併症とも深く関係しているのです。心血管疾患の発症には上記が関与することが大きく考えられ、したがって無症候性高尿酸血症の人は食生活を含む前記した生活習慣の是正が薬物治療の前に優先されるべきとされています。無症候性高尿酸血症の人の血管尿酸値は8.0mg/μ、特に9.0mg/dl以上上昇していると、将来の痛風発作の発症頻度が有意に高まることが示されています。またそれ以上に慢性腎臓病(CKD)、高血圧、冠動脈疾患、脳卒中、心房細動、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、糖尿病などの発症に関して尿酸高値は独立した危険因子であることが大規模な観療研究で示されていることが重要です。たとえばCKDの進展抑制を検討した研究では、血清尿酸値の低下(この場合は薬の服用による検討になる)により、血清クレアチニン、eGFR(腎機能の程度をあらわす)の低下が有意に抑制されています。また心不全の人では血清尿酸値の上昇がしばしば認められますが、尿酸値の上昇は血管の内皮機能が障害されやすいことが示されています。(尿酸生成抑制薬の服薬で好転することも示されている)高血圧ではリスクのみならず、尿酸高値の合併頻度が、高血圧を診療する外来で高い(男性41%、女性9%)ことは以前のWebでも記しました。
上記に記したように尿酸のリスクに関しての研究は数多くありますが、心血管疾患やCKDの発症や進展の抑制に関した尿酸降下薬による血管尿酸値低下効果の研究では、いまだその効果は一定ではありません。そのため更なる研究の集積が必要とされています。
しかし、高血圧、冠動脈疾患、腎障害、糖尿病などの発症抑制に関する血清尿酸値に関する研究結果では確立されたものはなく、現在検討中ではあるものの、推奨される尿酸値は示されています。それは上記などの合併症のある人は血清尿酸値8.0g/dl、合併症のない人では血清尿酸値9.0g/dl以上が食生活などの生活習慣の修正をおこなったうえでも認められる場合、尿酸降下薬の服用を考慮し6g/dl未満を目標にするというものです。これらはその達成による効果はいまだに十分明らかではないため、高尿酸血症の人が、今回記したことを納得したうえで服用していただくということになります。いずれにせよ無症候であれ高尿酸血症は心血管病をはじめとした病態のリスクとなります。したがってその是正は重要です。

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