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糖尿病 動脈硬化性心疾患発症予防に必要な事

2型糖尿病の人における動脈硬化性疾患の危険因子としては冠動脈疾患ではLDL-コレストロール(LDL-C)とトリグリセライド(TG、中性脂肪)が、脳卒中では収縮期血圧が挙げられます。その他、低HDL-コレストロール(低HDL-C)、HbA1c(糖尿病の1〜2ヶ月のコントロール状況を表す指標)喫煙なども動脈硬化性疾患のリスクとされています。しがたって糖尿病の人はこれらのリスクとなるものを包括的に管理することが、その発症予防に重要とされています。各々について説明します。@血糖:血糖管理強化が動脈硬化性疾患の発症抑制効果を示すには、血糖への介入後長期間を要します。そのため早期に良好な血糖のコントロールを行うことがその発症抑制ひいては長期の生命予後の改善につながります。また、血糖のコントロールのために使用される薬剤にはその種類により動脈硬化性疾患に対する抑制効果が報告されています。一方厳格な血糖管理は低血糖のリスクを高めます。それによる重篤な低血糖、不整脈の出現は心血管死と関連すると報告されています。脳卒中に関しても、高齢の人ではその発症リスクは血糖をほぼ通常のコントロールをされた人(HbA1c7.0〜8.4%)にくらべて、コントロール不良な人(HbA1c8.5%以上)は約2.6倍と上昇します。一方、厳格にコントロールされた人(HbA1c7.0%未満)でも約2.4倍と上昇します。これらのことは糖尿病、特に高齢糖尿病の人では、一律にHbA1cの低下を目標にするのではなく、高血糖のみならず過度の血糖コントロールによる低血糖にも最新の注意を払う必要があることを示しているのです。A脂質:糖尿病の人は高LDL-C血症、高TG血症、低HDL-C血症を合併することを多く認めます。LDL-Cの上昇により冠動脈疾患の発症リスクは高くなります。(中等度の上昇により約1.5倍上昇したとの報告がある)これに対して脂質を低下させる薬(スタチン)の内服により糖尿病の人の冠動脈疾患による死亡リスク、心血管疾患の発症リスク、脳梗塞の発症リスクは大きく減少し、その効果は非糖尿病の人と同程度と報告されています。高TG血症の人においても冠動脈疾患の発症リスク上昇します(中等度の上昇で約50%増加したとの報告あり)大規模な研究ではTGを低下させる薬の内服により、非致死性心筋梗塞の発症が約25%抑制されたとされています。低HDL-C血症の人(HDL-Cが38mg/dl未満、正常は40mg/dl以上)に関しても致死性の心筋梗塞が約20%増加したとの研究報告があります。したがって脂質の管理は重要です。B血圧:糖尿病の人における血圧高値が動脈硬化性疾患のリスクであることは周知の事実であり、血圧値が高いほど、それにより死亡する絶対リスクが増加することは示されています。脳血管障害では血圧を降下させることの有効性は認められています。一方、冠動脈疾患については治療開始前の血圧が高値の人で血圧降下の有効性が認められ、その効果は限定的との報告はあります。
上記などにより、糖尿病の動脈硬化性疾患の発症予防において、高血糖、脂質異常症、高血圧の管理は重要であり、なおかつ喫煙、メタボリックシンドロームなどに認められる内臓脂肪型肥満などもリスクとなりそれらを含めた包括的なそして早期からの管理が必要となります。基本となるのは食事療法、身体活動増強、禁煙などです。しかしこれら生活習慣の介入のみで糖尿病の人の動脈硬化性疾患の発症率や死亡率を低下させる明らかな証明はされていません。しかし薬物療法を組み合わせた包括的な管理をすることにより、その発症抑制効果は示されています。しがたって、生活習慣の改善+必要であるならば早期に薬物療法を行っていただくことが糖尿病の人の心血管疾患の予防かつ生命予後に重要ということなのです。

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