お知らせ

高血圧の治療・管理

わが国では高血圧と推定される人は約4300万人おられます。そのうち自分が高血圧であるか知らない人は約1400万人おられ、知っていても治療をされていない人は約450万人おられます。しかし2400万人強の人は高血圧の治療をされているわけです。すなわち国民の2割弱の人が良好な血圧の維持を高血圧による脳心血管病などの合併症予防目的のために現在治療をされているのです。わが国は出生減による人口の減少は今後続くと予想されていますが、高血圧を発症される人は今後も人口比に応じ多いと推定されます。少なくとも現時点では多くの医療機関で高血圧を主訴として受診される人を診療することは多いと推定されます。今回は高血圧を主訴として受診される人の診療の流れ・管理について説明します。血圧が高いと医療機関を受診される人の多くは、会社の健康診断・人間ドッグで高血圧を指摘され受診の推奨をされる、自宅で血圧を測定して血圧が高いことに気がづく、両親・兄弟が高血圧あるいはその合併症の脳心管病を発症した、などの理由が多いと考えられます。
医療機関ではそれらの人に対して以下のような流れで管理をすることになります。
@血圧の高値が継続的であるかの確認と血圧のレベルの評価 A二次性高血圧の除外 B高血圧以外の脳心血管病などの危険因子の有無,臓器の合併症の評価 C生活習慣の修正 D薬物療法の必要性の評価 E降圧目標値の決定
この@〜Eのことを順次、または必要に応じて平行しておこないます。@は健診のデータ(その年、前年度の)の参照、家庭血圧の一定期間の測定(この場合白衣高血圧、仮面高血圧の有無も確認する)、日を改めての外来での血圧の測定などをおこないます。Aは年齢、病歴、診察所見、一般の臨床検査からその存在を疑いスクリーニング検査をおこないます。Bは危険因子として、年齢(65歳以上)、男性、脂質異常、喫煙、さらにもっと脳心管病発症のリスクの高い脳心管病の既応、非弁膜症性心房細動、糖尿病、蛋白尿のある慢性腎臓病(CKD)があり、臓器の合併症としては、心臓の肥大(心電図、心エコーなどで)、腎機能障害(CKD)などがあげられます。
高血圧でAはなく、Bの危険因子の年齢以下4項目のうち2項目以下に相当するT度(140〜159/80〜99mmHg)の高血圧の人はC(以前のWebに詳しく記載している)をしていただき、そのおおむね1ヶ月後に受診していただいて、それでも充分な降圧がなくT度の高血圧値である場合はDをその人に説明し、理解を深め共有していただいたうえで投薬を実施することになります。
その場合Cの継続は必須です。T度の高血圧ではあるがBの年齢以下の危険因子3項目以上に相当する人、あるいは脳心菅病の既応などそれよりリスクの高い人ではCの継続とともにDより投薬は開始することになります。受診時U度(160〜179/100〜109mmHg)の高血圧の人はリスク因子がまったくない場合を除き投薬を開始します。受診時V度(180以上/110以上mmHg)の高血圧の人は受診日より服薬していただくこととなります。これらはすべて脳心血管病などの合併症予防のためおこなうものです。
降圧目標値は、わが国の4300万人の高血圧に人の1200万人しか達正できていないとされていますが、妥協なく、その人の将来のため達正する必要があります。降圧目標値は年齢、基礎疾患、現在服薬している薬などにより異なりますが、それは個別に説明し、降圧スピードなどを考慮し、有害事象の出現に注意しながら服薬していただきます。また、降圧薬以外の脳心菅病予防に対応する薬(脂質治療薬、糖尿病治療薬、抗血栓治療薬など)を服用している人は、それらの薬を確実に服薬していただきます。過降圧による有害事象の出現のリスクはありますが、その事は我々循環器医はよく存じており、前記のように降圧していきます。しかし降圧による自覚症状(めまい、立ちくらみ、動悸など)の出現があれば早めに医師に伝えていただく必要があります。降圧薬の減量・変更が必要となる場合があるからです。以上、今回は高血圧の治療の流れについて説明しました。高血圧で受診される人の多くは、降圧薬の服用が必要かどうか、あるいは服用する上での不安をかかえておられる場合が多く、今回はそれをふまえて記載しました。