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カテーテルアブレーション 心房細動への

カテーテルアブレーションは、カテーテルを介して治療の標的となる心筋組織に体外からエネルギーを加え、これを焼灼・破壊する治療法です。主として頻脈性不整脈に対する治療として導入され、初期は発作性上室性頻拍、心室頻拍に対しておこなわれました。その後、機材などの開発が進み、2000年前後より心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーションがおこなわれ現在までにさまざまなアブレーション法が考案され治療成績は向上しています。近年では特発性および遺伝性疾患を背景とする心房細動・多形性の心室頻拍に対するカテーテルアブレーションもおこなわれるようになっています。今回は現在カテーテルアブレーションがもっとも普及しているAFに対するアブレーションの概要を説明します。AFは加齢と伴にその有病率が上昇する非常に多くみられる不整脈です。またAFによりAFのない人とくらべ心血管死が約2倍、脳梗塞が約2〜5倍、心不全が約5倍に増加し、生活の質(QOL)が著しく低下することが報告されており、非常に重要な疾患です。AFは3つの基質によって規定されているといわれています。第1に遺伝的基質です。家族内で発生するAFは時々認められ、遺伝との関連は指摘されています。第2に加齢や併存疾患による基質です。加齢や高血圧、弁膜症、睡眠時無呼吸などにより、AFが発生・持続しやすくなります。またこのことは60歳以降で顕著に増加し、終生にわたって増加が認められます。第3はAFによるリモデリング(心房の拡大、機能の低下といった構造の変化)です。AFによるリモデリングがおこることにより、AFはより持続しやすい状態になるといわれています。AFに対する治療としては薬物を用いて心拍数をコントロールするレーテコントロール(心拍数を状況に応じて80〜110/分に管理することが多くおこなわれている)とリズムコントロール(薬物・カテーテルアブレーションを用いて正常の調律に復帰させる)がおこなわれその効果(普通のリズムの維持、身体的な死亡を含めた影響)が比較されてきました。
諸種の経過をへて、現在AFに対するカテーテルアブレーションを含めた早期のリズムコントロールがレートコントロールよりも心血管疾患による死亡、脳卒中、心不全入院、急性冠症候群などを有意に減らすことが報告され、リズムコントロールの有効性が示されました。そしてカテーテルアブレーションがAFの再発率を低下させることも明らかにされています。アブレーションが考慮されるAFは以下に分類されます。1.発作性AF:AF発作後7日以内に正常の調律に復するもの。2.持続性AF:AF発作後7日を超えてAFが持続するもの。3.長期持続性AF:1年を超えて持続するAF。4.永続性AF:AFであることが患者さんそして医師に受容されており、正常の調律への復帰および維持が考慮されない場合。5.はじめて診断されたAF:心電図上はじめてAFが確認されたもので、AFの持続時間や真の初発のAFであるかどうかは問わない。そしてアブレーションおこなう上でその人の自覚症状も大切となります。それを分類すると、a.症候性のAF:AFによる息切れ、易疲労感、胸部不快感などの症状があるものでAFの約半数が症候性といわれています。b.無症候性AF:AFによる症状がないもので、健康診断や他の疾患でたまたま医療機関を受診して診断されることが多く、AFの約40〜50%との報告があります。1でaのAFで抗不整脈による症状の改善が困難でその人のQOLにAFが影響を与える場合は、カテーテルアブレーションは一番目の適応となります。欧米では、薬物治療に失敗した場合や薬物治療を望まない人に対しても1番目の適応とされることがあります。1でbのAFの人に対するカテーテルアブレーションはその有効性はまだ確立されていなく、脳梗塞の予防においては薬物療法との相違はないため、個々の人のリスクと利益を評価したうえで検討されるべきとされています。2でのaの人のAFでは抗不整脈薬で症状が十分に改善されなく、その人のQOLに影響を与える場合には、カテーテルアブレーションの適応となります。2でbの人のカテーテルアブレーションは1と同様にその人のリスクと利益を評価したうえで検討されます。(心不全や脳卒中のリスクが高い場合はアブレーションの適応は高まる)
3.はしばしば心房の拡大が著名でアブレーション後の再発率も高くなります。したがって抗不整脈薬で症状が十分に改善されずQOLに影響がある場合(3のa)にアブレーションの適応となります。しかしアブレーション後の再発率は高くなるため他の治療選択肢と比較して慎重に検討する必要があります。3のbのAFの人に対してはアブレーションは一般的には推奨されません。(心不全や脳卒中のリスクが高く、他の治療選択肢が限られている場合、検討することはある)
AFに対するカテーテルアブレーションにおいて適応とならない場合も存在します。それは以下の場合です。
@5でaではあるが初回発作の場合:初回発作の場合、2回目の発作は50%で出ないとされており、次の発作はが起こるまで経過を追うべきです。しかし5でbであり健診・医療機関でAFが検出された場合は、以前の発作の有無はわからないため初回の検出であってもアブレーションの適応は検討しても良いものと考えられます。
A基礎疾患によるもの:甲状腺機能亢進症によるAFでは甲状腺機能の正常化によりAFのコントロールが可能(正常な調律への復律)となる場合があります。しかし機能の亢進の正常化が得られてもAFである場合にはアブレーションの適応となります。僧帽弁の弁膜症が重症な場合で手術適応となる場合は、僧帽弁の手術時に外科的なアブレーションをおこなうことがあり、カテーテルアブレーションの適応にはなりません。
B左心房内に血栓がある場合:この場合、カテーテルの左心房内への挿入により、血栓を破砕し全身の塞栓症を起こすリスクがあるため、カテーテルアブレーションの適応とはなりません。
C出血性疾患により抗凝固薬の服用が困難な場合:周術期(アブレーションの場合術前最低3週間から術後最低3か月)には血栓形成の抑制のための抗凝固薬の服用が必須となります。この期間中の抗凝固薬の服用継続が困難な出血性疾患を有する人の場合、カテーテルアブレーションは困難となり、出血性疾患への治療が優先されます。
D前記の4.の人の場合、前記でありカテーテルアブレーションは考慮されません。
以上今回はカテーテルアブレーションのことに多く施行されているAFに対してを概説しました。