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ベーチェット病 合併する動脈病変

ベーチェット病は口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、眼症状、皮膚症状を主症状とする慢性の再発性の炎症疾患です。本病は主に日本、韓国を中心とした東アジアや、トルコ、サウジアラビアなどの中近東に多く見られます。
我が国では北海道や東北地方に多くみられ、20〜40歳で発症することが多く、ピークの発症は30代前半とされています。
男女比はほぼ1:1ですが、男性のほうが重症化しやすいとされています。病理学的には全身の動静脈や毛細血管を侵す血管炎が主体とされています。発症には遺伝的な背景に細菌、ウイルス感染や他の環境因子が免疫に関与することが主な原因と考えられています。ベーチェット病の人の動脈病変は発症の1〜12%の人で出現し、男性に圧倒的に多いとされています。深部静脈血栓症や皮下の血栓性静脈炎などの静脈病変を同時に合併する人も多く認めます。ベーチェット病の人は発病からおおむね4〜10年程度で動脈病変が現れますが、動脈病変がベーチェット病の初期の症状である人もいます。ベーチェット病の動脈病変は動脈の閉塞と動脈瘤に分類されます。
動脈病変を合併した人の生命予後は、5年生存率が90%、20年生存率が73%と動脈病変を合併していない人とくらべ不良です。動脈瘤は胸部・腹部大動脈に多く見られ、その破裂予防のため外科的治療が必要になることを多く認めます。
動脈の閉塞は上下肢の動脈、腸間膜動脈、冠動脈など中小の動脈に発症することが多いとされています。動脈の閉塞性病変に対する治療は確立したものはなく、保存的治療をおこなう場合が多いのが現状です。保存的治療としては、免疫を抑制する薬の使用が有効との報告はあります。また、ベーチェット病の人では血液中の活性化された血小板が健常な人とくらべ多いため、抗血小板薬の優位性も示唆されています。動脈の強い虚血の症状が出現することはまれですが、その場合は血行の再建が必要となります。しかしこの動脈の血行再建に関しては、閉塞に対する血管内治療(EVT)について、ほとんど報告されていないのが現状なのです。動脈瘤を含めた動脈病変を合併した人のEVTに関する報告では、再閉塞、EVTを行う血管の感染などの合併症リスクが高いとされており、EVTの適応を慎重に判断する必要があるとされています。外科的な動脈病変の血行再建では、ベーチェット病の人は静脈にも炎症性変化を伴っていることが多いため、手術に関して使用する血管はその人の自己の静脈よりも人工血管を選択することが多いと報告されています。
動脈病変を合併する人の場合は、手術時にすでに広範囲にわたって動脈壁がき弱化していることが多く、手術後半年から2年程度の早期に手術部に仮性動脈瘤を形成されることがしばしばあり問題です。さらに手術で使用した血管も高頻度に閉塞することがあるのです。したがって手術後合併症が上記などより致命的となることがあるため、手術適応については慎重な判断が必要となるのです。
以上、今回はまれな病変ではありますが、ベーチェット病に合併した動脈病変に関して説明しました。頭のすみにおいておかれれば幸いです。