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高齢者の喘息

世界保健機関(WHO)では65歳以上を高齢者としており、したがって65歳以上で喘息に罹患している人は高齢者喘息になります。高齢者喘息の人は、喫煙、併存疾患、呼吸の生理学的変化、フレイル、認知機能低下、免疫の老化、ポリファーマシー(薬の多剤服用)などにより喘息の診断と治療に難渋されることを多く見受けられます。また近年では喘息の死亡者数に占める高齢者の割合は90%近くを推移しており、特に75歳以上の人はその81.5%を占めています。このため、喘息の死亡者数の減少のためには、後期高齢者の特徴を考慮し、その診断、治療、管理の実践が必要とされています。高齢者喘息はその発症時期により、若年期に発症して長期間にわたり持続している早発型と、成人期に発症した遅発型に大別されます。早発型の人は喘息の家族歴、アレルギー性鼻炎の合併が多く、2型炎症を有している頻度は高いとされていますがCOPDの合併は少ないです。早発型の人の喘息の罹患年数と気流の閉塞は相関し、長期間の罹患を有する人の中には気流閉塞が強く、コントロールが不良である人もいます。遅発型の人は喘息の家族歴や鼻炎の合併は少なく逆にCOPDの合併を多く認めます。また遅発型の人は喫煙、いびき、副鼻腔炎、体重増加、肥満が喘息発症の関連因子とされています。喘息の診断では肺機能検査における1秒率の低下(1秒間に呼出される気流の量を努力性肺活量で除したもの)、気道過敏性の亢進(気道を収縮させる物質を吸入することによる気道の狭窄を計測して判定する)、呼吸中一酸化窒素の濃度(FeNO)の増加などで診断され、高齢者でも同様です。しかし高齢者の喘息では、喘息に特徴的な発作性の増悪の症状は認められますが、呼吸困難感の自覚に個人差が大きく疲労感を主に訴える人もいます。また喘息ではない高齢者でも加齢に伴う生理的な変化により、1秒率は低下し、気道過敏性は亢進するため、正確な評価が困難な場合もあります。一方FeNOは加齢に伴い増加し、高齢者における喘息の有無を判別する正確な値は示されていませんが、その増加は高齢者喘息の診断で有用性は示唆されています。また高齢者では心不全、貧血や胃食道逆流症などの慢性疾患を有している人は多く、喘息と誤診断されることがあり注意は必要です。鑑別には胸部X線、心電図、心エコー検査や血液検査は有用です。そして高齢者では、若年層と異なりCOPDを合併する人(ACO、ご以前のWebで説明)は多くなります。喘息を対象とした場合、ACOはその11〜61%が有病されています。喫煙している人に多く、胸部のCT検査を含めその診断は重要です。高齢者における治療は、基本的な病態は若年層と同様に気道の慢性発症であることより、吸入ステロイド薬(ICS)の使用がその長期管理における第1選択薬であることには変わりありません。しかし高齢者の場合、加齢に伴い、吸気流量は低下し、手指の筋力の低下や認知機能の低下も関与して吸入手技は不良となることが多くあります。したがって個々の人の吸入の手技や操作の理解度に応じた薬剤の選択や変更が必変となります。また認知症やうつ病が併存する人の場合では喘息の管理に対する認識が乏しくなたるめ、治療の継続が低下し、増悪をきたしやすくなります。藥物治療の自己管理が困難な人では、介護者が吸入の補助やケアをおこなうことで喘息の増悪頻度の低下や呼吸機能の改善が可能となります。したがって個々の人のレベルにあった丁寧な吸入の指導や教育を本人とその介護者が受けられる体制の確保が重要となるのです。以上今回は高齢者の喘息について概説しました。