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お知らせ
無症状の特発性心室期外収縮 その治療
症状がなく心機能低下を認めない特発性心室期外収縮(特発性PVC)の人の治療は、まず経過観察をしていただき、下記の評価をおこない、治療を検討していただくことになります。それはPVCの発生率(PVCバーデン)の評価、短時間の持続しない心室頻拍(NSVT)の有無、器質的心疾患の有無(心エコー、心臓造影MRIなどでおこなう)などの評価となります。次に定期的な心電図や心機能の追跡をおこなっていただき、症状(動悸、意識消失など)の出現や心機能の低下が認められた場合には、御本人との意志を共有したうえで、カテーテルアブレーションを選択することもあります。これについて説明します。PVCは自覚症状はともなわないことは多く、器質的心疾患を合併しない場合(特発性PVCの場合)生命予後は良好です。一方、その発生はまれですが、PVC誘発性心筋症(PVCが原因となり心機能の低下を認める心臓)や、致死性不整脈の引き金となる可能性は懸念されるところです。しかしこれらを含み、特発性PVCに対するカテーテルアブレーションの有効性は高く、合併症発症率は低値であることは明らかにされています。現時点では残念ながらPVC誘発性心筋症や致死性の心室からの不整脈の発生を正確に予測できる方法はありません。したがって症状のない特発性PVCの人にとってアブレーションが有益な治療であるかを吟味することは重要な課題と考えられます。そこで、PVC誘発性心筋症の危険因子について考察してみます。PVCバーデンが高い人ほど、PVC誘発性心筋症となるリスクが高いことは知られています。たとえば、特発性PVCの人での研究で、24時間ホルター心電図でPVCバーデンが1日の総心拍数の24%以上の人の場合、PVC誘発性心筋症の発生リスクが高く、その一方でPVCバーデンが1日の総心拍数の10%未満の人の場合は、心機能の低下を認めなかったとの報告があります。PVCの出現率に関しては日内変動や日差変動を認めるため、正確なPVCバーデンの評価には、長時間(1週間以上)の心電図のモニタリングが重要であるともされています。したがってPVCバーデンの正確な評価はそれにもとづいた方法でおこない、それによるPVC誘発性心筋症のリスクの評価の確立が望まれます。次にPVC誘発性心筋症の生命予後について考察してみると、特発性PVCの人の無治療での生命予後は、その4%の人で心機能が50%低下し、1%の人で心不全を発症したとの報告や、心不全の発生は認めなかったなどの報告があります。つまりこれらの研究結果から、突発性PVCの人は経過中に心機能が低下することはまれであり、心不全が顕在化することはさらにまれといえます。またPVC誘発性心筋症に対するカテーテルアブレーションの研究では、PVCバーデンが24%の人に対して施行したところ、カテーテルアブレーションの成功率は66〜90%、平均的な心機能の改善率は約8%であったと報告されています。カテーテルアブレーションによる合併症は約2%、死亡は認めなかったとの別の報告もあります。したがってPVC誘発性心筋症になった場合でも、カテーテルアブレーションによりPVCの抑制が得られれば、心機能は多くの人で4〜6ヶ月以内に回復してくるため、全般的な生命予後は良好と考えられます。
以上の事から考察すると症状のない特発性PVCの人に対する治療介入についての明確な合意はなく、カテーテルアブレーションを治療の第一選択とする証明はされていません。まずは定期的な心電図や心機能の追跡が推奨されるところです。
PVCバーデンが高い場合などで、PVC誘発性心筋症のリスクが懸念される場合では、その人の疾患などの背景、アブレーション施行施設での成功率、などを検討したうえで、カテーテルアブレーションは考慮されることになります。ヨーロッパにおいても、症状のない突発性PVCの人では、定期的な心機能の追跡が推奨され、PVCバーデンが20%以上の人の場合にのみ、カテーテルアブレーションが弱く推奨されています。以上今回は心機能の低下を認めない特発性PVCの人に対する治療について概説しました。
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