お知らせ
高尿酸血症・痛風発作 その予防の為の生活習慣の修正
痛風・高尿酸血症は生活習慣病であり、強力な尿酸降下薬が用意され、血清尿酸値のコントロールが容易になった現在においても、その薬物療法の有無にかかわらず、生活習慣の修正も重要です。痛風の原因となる高尿酸血症を引き起こす要因として内因性のプリン体合成、あるいは分解の亢進とならび、外因性の要因である高プリン食やアルコールが重要となります。またプリン体の体内の排泄経路として腎を介する経路、消化管を介する経路がありますが、いずれの経路の尿酸の排泄の低下は当然のことながら高尿酸血症の原因となります。運動は尿酸産生および排泄の経路に正または負の影響を与えます。肥満やメタボは高尿酸血症と密接な関連があり、食事や運動療法はその是正は痛風発作予防に有効と考えられます。それでは高尿酸血症の生活習慣の修正による効果を個別にみていきます。
@食事療法:高尿酸血症だけでなく生活習慣病のすべてに当てはまる食事療法は適正エネルギーの摂取です。個々の人の適正なエネルギー摂取量は標準体重(身長(u)×22)1kgあたり軽い労作(デスクワークが多い職業の人)の人で25〜30kcal/kg、普通の労作(立ち仕事が多い職業の人など)で30〜35kcal/kg、重い労作(力仕事が多い職業の人など)は35kcal/kgが推奨されています。食事中に含まれるプリン体の過剰な摂取は血清尿酸値を上昇させ、痛風リスクを高めるために摂りすぎないようにすることが重要です。たとえば、食事中に摂取する食材にはプリン体が含まれており、その中で細胞分裂の活発な組織、つまり肉や魚にはプリン体が多く含まれており、その摂取量が多いほど血清尿酸値は上昇し、ひいては痛風発作を誘発します。一般的にプリン体の1日の摂取量は400mg程度にすることが推奨されています。またプリン体は水溶性なので、高プリン体の食材であってもプリン体が溶出した煮汁を摂取しなければプリン体の摂取量は抑制できます。A飲酒制限:アルコール摂取と痛風発作の疫学調査では、 少量飲酒者(アルコール12.5g未満摂取の人)で1.2倍、中等度飲酒者(アルコール12.6〜37.4g摂取の人)で1.6倍、大量飲酒者(アルコール37.5g以上摂取の人)で2.6倍とアルコール摂取量により痛風の発症リスクが高まることが示されています。アルコールは肝臓で代謝される時に内因性のプリンを分解することにより血清尿酸値を上昇させます。またアルコール飲料に含まれるプリン体の影響も重要で、酵母や麦芽由来のプリン体を多く含むビールは蒸留酒やワイン(赤ワイン)よりも血清尿酸値を上昇させます。プリン体をカットした発泡酒は通常の発泡酒とくらべて血清尿酸値を上昇させません。つまりアルコール飲料のなかではビールが最も痛風リスクを高めます。したがって血清尿酸値への影響を最低限に保つアルコール摂取量の目安は日本酒1合/日、ビール350〜500ml/日、ウイスキー60ml/日とされています。一方ワインは148mgまでは血清尿酸値を上昇させません。B食物(尿酸の代謝に影響する):果糖、キシリトールは代謝される際にプリン体分解の亢進をきたし、血清尿酸値を上昇させます。果糖はショ糖(砂糖)の構成成分であり、その過剰な摂取は痛風のリスクとなります。したがって果糖を多く含む甘味飲料や果物ジュースは控えるのがよいとされています。一方果物自体の摂取は痛風のリスクはあげないとの報告があります。また逆にコーヒー、チェリー、ビタミンC、乳製品(特に低脂肪乳製品)は痛風リスクを低減すると報告されています。近年食生活のスタイルとして果物、野菜、ナッツ、低脂肪乳製品、全粒穀物、豆類が多く、甘味飲料や、肉類、食塩の摂取を減らしたダッシュ食(DASH)や、同種の食生活である地中沿岸諸国の伝統的な食事である地中海食を食する人では血清尿酸値は低下し、痛風の発症も有意に低下することが知られています。痛風の合併症である尿路結石の予防には尿のアルカリ化と飲水が有効であり、DASH食の要素が多いほど尿はアルカリ化します。飲水量は1日の尿量を2000ml以上に保つことを目標にすることが勧められていますが、慢性腎臓病(CKD)のある人では腎臓の機能に注意しながら、飲水量を設定する必要があります。
運動と尿酸:運動は肥満の是正、メタボの改善により血清尿酸値を低下させることが期待されます。一方、特に短時間の激しい運動では、尿酸の産生亢進と尿酸の排泄低下の両方により血清尿酸値は上昇します。しかし、適度な有酸素運動ではそうではなく、運動しない人より血清尿酸値は低い傾向にあります。運動の強度は嫌気性代謝は閾値(AT)の40〜50%程度がよいと考えられます。具体的には、歩行、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を楽あるいはややきついレベルで1日30分〜60分程度おこなうことが適しています(少なくとも1回に10分以上の運動はおこなう)。レジスタンス運動は強度が強いと血清尿酸値が上昇しやすいため、低強度にすることが勧められます。
以上今回は高尿酸血症に対する生活習慣の改善に関して記しましたが、最後に睡眠不足やストレスでも高尿酸血症が生じることを付け加えておきます。つまり高尿酸血症の人は生活習慣の修正が大事でそれにより生活の質の向上を目指されることが肝要なのです。