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心腎症候群(CRS)

心腎症候群(CRS)という概念は2004年に提唱されています。CRSは増加傾向にあり、心疾患による死亡がほかの患者の人と比較し10〜20倍多くなるとされています。CRSは急性に出現したものか、あるいは慢性に出現したものか、また主要な障害臓器が心臓か腎臓かによって5つのサブグループに分類されます。CRSの5病型は以下となります。

心腎症候群の種類 特徴 原因
Type 1:
急性心腎症候群
急性心不全によって急性腎障害をきたす 急性冠症候群など
Type 2:
慢性心腎症候群
慢性心不全により進行性に慢性腎臓病に至る 先天性心疾患、慢性心不全など
Type 3:
急性腎心症候群
急性腎障害によって急性心不全をきたす 急性腎不全、糸球体腎炎など
Type 4:
慢性腎心症候群
慢性腎臓病に伴って慢性心不全に至る 慢性糸球体疾患など
Type 5:
二次性心腎症候群
全身性疾患に伴い心臓・腎臓のいずれも同時に障害をうけるもの 敗血症、膠原病、アミロイドーシスなど

CRS-1:急性心不全に伴い急性腎障害(AKI)をきたす場合に分類されます。急性心不全において低心拍出量(心臓機能の低下による)の出現が主として考えられてきましたが、実際は急性心不全全体の1〜2割にしか出現しません。現在では、心拍出量の減少に伴う腎臓への血液の灌流の低下はCRSの病態の一部であり、腎機能の悪化の主要な原因は腎臓での静脈のうっ血と考えられています。心臓の機能の悪化によるAKIは、たとえばWRF(急性心不全の人の急性または亜急性の腎機能の増悪)として出現することがあります。WRFは入院後早期に出現し、心血管死亡率の増加や入院期間の延長と関連していることが知られています。(急性非代償性心不全でICUに入院した人はWRFの発症・促進に関連していることなど)
CRS-3:AKIに伴い急性心不全をきたす場合に分類されます。AKIの人は心不全のリスクが50%増加し、急性冠症候群(ACS)のリスクが40%高くなることが報告されています。またAKIによる高カリウム血症や代謝性アシドーシスは不整脈の誘因となります。
CRS-2:慢性心不全(CHF)と慢性腎臓病(CKD)は併発することが多く、どちらの疾患が最初に発生したかを区別することはむつかしく、CRS-2とCRS-4の区別は困難であることは多いです。CHFの人の45%にCKDの併存があることは報告されており、CKDの人の全原因死亡率および心臓疾患による死亡率の上昇と関連しています。
CRS-2とCRS-4はともに交感神経の活性化と、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAS)(説明は複雑で長くなるので略、覚えられなくてよい)の活性化やそれに伴う炎症反応の促進により心臓、腎臓の線維化の進行を促進します。
CRS-4:CKDに伴ってCHFに至る場合に分類されます。CKDの人は心血管リスクは非常に高く、CKDの人の心血管疾患(CVD)の発生率をみた2年間の追跡調査では、CHFが30.7(100人年あたり)、急性心筋梗塞が3.9、脳血管障害が16.6、アテローム性動脈硬化疾患が35.7と報告されています。4郡の人もRASの活性化亢進が病態の進行に関与していると考えられています。
CRS-5:全身疾患が心臓と腎臓に同時に損傷をもたらす場合に分類されます。CRS-5の原因となる全身性疾患には、敗血症、膠原病、サルコイドーシス、アミロイドーシス、肝硬変などがあります。そのほかにもいくつかの慢性全身性疾患(糖尿病、高血圧症など)もCRS-5となりうる可能性があります。敗血症はしばしば発症を認めることがあり、それによりAKIを発症させることが多く、死亡率が高くなります。また心機能の異常も敗血症ではよく認められます。
CRSの治療はCRSの病態が複雑で、多くの併存疾患をもつため確立した単一の治療法はありません。薬物、ペースメーカーをもちいた心臓の補助療法などが、心臓、腎臓機能障害の予防、軽減、改善のためにおこなわれているのが現状です。主要な治療薬物・補助療法は、SGLT2阻害薬、トルバブタン、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬などの薬物療法、心臓再同期療法(ペースメーカーを用いて心臓の左右の心室に人工的に電気信号を送り、心臓のポンプ機能を助ける治療法)の使用などになります。薬物投与はおもに心・腎機能障害の予防、軽減に(一部改善が認められることがある)、心臓再同期療法はその改善に使用されます。
CRSの診断・進行度を反映する検査は、現在なく今後の研究に期待されるものが多くあるため省略します。
以上、今回はCRSの病態、一部治療法について概説しました。