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2型糖尿病発症 環境要因との関係

2型糖尿病は複数の環境因子が組み合わさることで発症は加速されます。したがってそれらの環境因子を是正することで発症を予防することはある程度可能と考えられます。今回はこのことに関して記載します。まず肥満指数(BMI)と2型糖尿病ではその間には強固な正の関係が存在します。そしてアジア人は欧米人と比べ発症に対するBMI値は大幅に低いことが明らかとなっています。
また小児期から成人早期の過体重は、将来の2型糖尿病の発症リスクを上昇させ、特に成人早期の過体重と発症リスクは最も強く関連しています。一方小児期の過体重は思春期前に解消できれば、発症リスクを増加させません。減量効果をみると生活習慣の改善とともに2kg体重を減量することができれば2型糖尿病の発症抑制に大きな効果があります。つまり発症の予防には生涯にわたる体重のコントロールが必要ですが、特に思春期から成人早期の体重を適正に維持することが重要と示唆されるのです。次に身体活動では、1日の総身体活動量や余暇時の身体活動量と2型糖尿病の発症リスクとの間には負の関係がみられます。そして1日の歩数が増えるにつれて発症リスクは低下し、速歩の割合が多いとリスクの減少はさらに大きくなります。勤務中の活動量の増加も発症リスク低下と関連し、通勤の手段では徒歩や自転車で通勤する人は発症リスクは低くなります。余暇時の運動における身体活動では、有酸素運動のみならず筋力トレーニングも発症リスクと関連し、両者を組み合わせた運動はリスクを大幅に減少させます。一方座り続けるような身体活動量が著しく低い行動の増加は2型糖尿病の発症リスクを上昇させ、両者の関連は身体活動量と独立しており、余暇時の運動では打ち消すことができない強固な関連があります。飲食では、これまで多くの研究で飲酒量と2型糖尿病の発症リスクとの間にJ字型の関係が認められ、適量範囲内の飲酒をする人は、非飲酒者よりも発症リスクが低いとされてきました。しかしアジア人ではこれに対して異論などの議論があり、現在では発症リスク軽減のための飲酒は推奨されていません。甘味糖類(ショ糖、果糖、ブドウ糖)や人工甘味料を添加したジュースは発症リスクを上昇させます。一方コーヒー、ココア、お茶(特に緑茶)さらに水の習慣的な摂取あるいは摂取増加は発症の予防に有効となります。
乳製品、特にヨーグルトや野菜、果物の摂取も発症予防に有効です。
睡眠に関しては、睡眠時間と2型糖尿病の発症リスクの間にはU字型の関係が認められ、7〜8時間の睡眠時間で発症リスクが最も低くなります。そしてそれ以下の短時間睡眠やそれ以上の長時間睡眠ではともに発症リスクは上昇します。昼寝は1日に1時間以上になるとリスクの上昇を認めます。睡眠障害の原因となる不眠症や睡眠関連呼吸障害であるいびきや睡眠時無呼吸症候群も発症リスクを高めます。睡眠位相では、交代勤務で主に夜勤で働く人は、日中のみ勤務する人と比べ発症リスクが上昇します。しかし常時夜勤の人ではリスクの増加は認められません。
ストレスや労働環境などの心理社会的要因では、うつ病と2型糖尿病との間には密接な関係が指摘されています。それはうつ病(うつ傾向)を有する人は、そうでない人とくらべ、2型糖尿病の発症リスクが高く、また2型糖尿病の人は、糖尿病がない人とくらべうつ病の発症リスクが増加するというものです。つまりうつ病と2型糖尿病との間には双方向の因果関係があるのです。精神的ストレスでは強いストレス(PTSDなど)を経験すると発症リスクは高くなります。劣悪な労働環境(いじめや暴力、雇用不安)は発症リスクを上昇させ、一方同僚や上司からの支持・支援はリスクを低下させます。
社会環境ではPM2.5の増加は、その地域の発症リスクを増加させ、過度な交通騒音も発症リスクを増やします。以上今回は2型糖尿病と環境要因との関係を、その主要なみじかなものに関して記載しました。記憶にとめておいていただければと思います。