お知らせ
心血管疾患の心臓リハビリテーション その中止基準
心臓リハビリテーション(心リハ)に関しては以前のWeb欄でもその効果・適応・方法などを記載しました。今回は心リハをやってはいけない病態、心リハを施行中の中止基準など知っておいていただきたい事項に関して説明します。心リハは以前にも記載したように個人が目標とする健康状態や身体機能を達成するために、健康状態とその人の運動耐容能に見合った安全かつ有効な運動をおこなうことを言います。心リハにおける運動プログラムには有酸素運動、レジスタンストレーニング、ストレッチングが中心となります。有酸素運動およびレジスタンストレーニングは頻度、強度、時間、種類を含んだ運動処方を原則とすることは以前のWeb欄に記載しました。ストレッチングは5〜6分間のウォームアップそして運動後の5〜10分間のクールダウン時に主運動よりも低強度の有酸素運動などをおこなうことです。しかし運動療法ではさまざまな種類、病期や重症度の心血管疾患の人が対象となるため運動療法が禁忌となる疾患・病態を十分に理解しておくことが、安全で効果的な運動療法をおこなううえで必須となります。
積極的な運動療法が禁忌となる疾患・病態は以下となります。
絶対的禁忌:@不安定狭心症または平地のゆっくりとした歩行(2MET)で誘発される心筋虚血 A過去3日以内の心不全の自覚症状(呼吸困難、易疲労感など)の増悪 B血行動態の異常の原因となるコントロール不良な不整脈(持続性心室頻拍、心室細動など) C手術適応のある重症な弁膜症、とくに症候性の大動脈弁狭窄症 D閉塞性肥大型心筋症 E急性の肺塞栓症、肺梗塞及び深部静脈血栓症 F活動性の心筋炎、心膜炎、心内膜炎 G急性の全身性炎症疾患または発熱 H重症高血圧(収縮期血圧>200mmHg、または拡張期血圧>110mmHg、あるいはその両方を有する人)、中等症以上の大動脈瘤など。相対的禁忌の病態では、ある時点で運動が禁忌に該当する場合でも病状の変化に伴い後に運動療法の適応となることがあります。つまり運動をおこなうことによる有益性がそれをおこなうことで生じうる心血管疾患発症のリスクを上回るときなどです。したがって相対的禁忌の場合はご本人が主治医とその時点で運動が可能かどうか相談されることです。運動療法が可能な人の場合においては、心血管疾患を罹患されている人は、運動療法をおこなうことによる心血管疾患発症・再発の高リスク群となります。したがって運動療法実施中の中止基準を知っておくことは非常に重要なことです。
運動療法実施中の中止基準は以下です。
a.本人が運動の中止を希望される場合 b.運動中の意識状態の悪化 c.心停止、高度な徐脈、致死的な不整脈(心室頻拍、心室細動)の出現またはそれらを否定できない場合 d.血圧・脈拍や自覚症状の急激な悪化(強い胸痛、腹痛、背部痛、てんかん発作、意識消失、強い関節痛、筋肉痛など)の出現 e.事故(転倒・転落、打撲、外傷)の発生 f.以下はコンセンサスは得られていませんが、中止基準と考えられます。f同一の運動強度または運動強度を弱めても胸部の自覚症状やその他の症状(不整脈、めまい、頭痛、気分不良、強い疲労感、下肢痛など)が悪化。g.血圧の低下(収縮期血圧<80mmHg)や上昇(収縮期血圧≧250mmHg、拡張期血圧≧115mmHg) h.徐脈の出現(心拍数≦40/分) i.経皮的動脈血酸素飽和度が90%未満へ低下または安静時から5%以上低下など。
また中止基準ではなく運動中の事故防止の関点から知っておく必要があるものでは、心血管疾患の人の運動療法中の合併症での事故のうち72%がウォームアップやクールダウン中に起きているということです。(ある報告による)つまりその日の体調によって運動療法をおこなうべきでないと判断される場合は実施しないことです。要は運動療法をおこなう人は、起こりうる可能性のある心血管の障害などあらゆる合併症について、 主治医などより情報を提供してもらい、不測の事態の出現を回避することが重要なのです。
以上心リハに関する注意点(中止基準など)について記載しました。