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高安動脈炎 血管性高血圧としての

高安動脈炎は大動脈およびその主要分枝や肺動脈、冠動脈に閉塞性あるいは拡張性の病変をもたらす非特異的大型血管炎で、その発症原因は不明です。日本においては女性の発症率が男性より高値です。高安動脈炎は比較的まれな疾患であり、確定診断までに年月を要することがあります 。そのため、医療機関の受診時には、血管病変の進行を示唆するめまい、視力障害、手のしびれ、高血圧などを訴える人を多く認めます。主要な所見としては、脈拍・血圧の左右差、頚部あるいは腹部の血管雑音の聴取、頚動脈洞反射(首にある頚動脈洞を圧迫することで起こる迷走神経の反射で血圧低下、失神を生じることがある)の亢進などがみられます 。本疾患の4割の人に高血圧を認め、二次性高血圧の原因意志として重要であり、生命予後に大きく関与します 。しかし、本疾患により両側の鎖骨下動脈の狭窄を伴う人は上肢の血圧は下肢の血圧より通常より低い値を示すため、高血圧が過少評価されることがあります 。
本疾患における高血圧の発症機序は以下などを複合した要素があります。@腎血管性高血圧 A大動脈狭窄性高血圧(異型大動脈縮窄症という) B大動脈弁逆流性高血圧 C大動脈壁硬化性高血圧。また本疾患の約2割の人に腎血管性高血圧を認めます。腎血管性高血圧に対する血行再建術(高血圧の原因となる腎動脈の狭窄部位をカテーテルを用いて拡張する、あるいは外科的手術により血流を改善する)の適応は以下となります 。
@降圧薬の使用においても有効な血圧の低下が得られなくなった場合 A降圧薬の使用により腎機能低下が生じた場合 B心不全症をきたした場合 C両側の腎動脈に狭窄を認める場合。この血行の再建をおこなう場合、長期間の良好な血流の改善は侵襲度は高くなるが外科手術の方が得られるとされています。そして高血圧の発生機序でもある大動脈弁逆流症は、本疾患の生命予後を規定する重要な合併症でもあります。そのため適切な降圧をおこない、そのうえで一般の大動脈弁逆流症の手術適応に該当する手術適応があれば、大動脈弁に対する手術(大動脈弁置換術)をおこなうことになります 。
本疾患に対する外科治療は、本疾患の活動性の炎症が消退したあと、あるいは本疾患の内科的な治療となる副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤の使用によって炎症を抑制した後に実施されます。外科治療の長期的な予後は概して良好です。本疾患の生命予後を決定する重要な病態は、腎動脈狭窄や大動脈縮窄症(大動脈が頭部や上腕への動脈を分岐した後に急に狭くなる先天性の病気)による高血圧、大動脈弁逆流症による心不全、冠動脈疾患、解離性大動脈瘤、動脈瘤の破裂などとされています。したがって生命予後の改善のために、診断後早期からの適切な内科的な治療(ステロイド治療、降圧薬の内服治療)と病変が重症な人に対する適切な外科的治療が必要でそれにより長期的な生命予後の改善が期待できます。血管性高血圧には高安動脈炎以外に結節性多発動脈炎、全身性強皮症、あるいは本文中に記載した大動脈縮窄症がありますが、今回は高安動脈炎について記載しました。