お知らせ

心不全予防

心不全はその発症前(無症状期)から心不全発症後までを、ステージ分類し、心不全発症前をステージA(心不全リスク)、ステージB(前心不全)とし、心不全発症後をステージC(症候性心不全)、ステージD(治療抵抗性心不全)とします。 ステージAは心不全の危険因子を有するが、症状や構造的・機能的異常を伴う心疾患、心筋障害をあらわすバイオマーカー(ナトリウム利尿ペプチドなど)の上昇がない状態です。 高血圧、動脈硬化性疾患(末梢動脈疾患、大動脈疾患、心室壁の運動の異常をきたさない冠動脈疾患、脳梗塞など)糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、メタボリックシンドロームと肥満・心毒性物質への暴露・心筋症の家族歴を有する、などが含まれます。 ステージBは心不全の症状はないが、次の1つ以上を有する状態です。 @構造的心疾患(機能的または構造的異常)すなわち心臓の血液駆出率の低下などに代表される左心室または右心室の機能障害、心室の肥大、心房・心室の拡大・心室の壁の運動異常、弁膜症を有する状態、構造的異常をきたした不整脈疾患 A検査により心臓の内圧上昇の所見がある、もしくは推定される状態 B心不全の危険因子を有し、バイオマーカーの上昇を生じる疾患(急性冠症候群や慢性腎臓病、肺動脈血栓塞栓症、心筋炎など)がない状態でのナトリウム利尿ペプチドなどのバイオマーカーの持続的高値がある状態です。
今回はステージB(前心不全)までの心不全発症のない段階の人での心不全発症予防について記載します。 ステージA・Bは症候性(症状を認める)心不全の発症予防においては重要な時期ですが、無症候性であるため、医師・患者さんも見逃しやすいこと、そのため治療の継続がとぎれたりすることにより、治療が不十分となりがちである点に注意が必要です。医師から十分な説明などをうけ、心不全のリスクや前心不全の概念を理解されるとともに、生活習慣の管理、服薬の継続、体重・血圧などのモニタリングを継続的におこない、確認することが重要です。 ステージA(心不全リスク)では、前述の心不全の危険因子(高血圧、糖尿病、CKD、肥満など)のコントロールと構造的/機能的心疾患発症予防に重点が置かれます。 ステージAからBへの進展を見逃さないためには、医療機関でのナトリウム利尿ペプチドの測定が有用となります。 生活習慣では健康的な生活習慣の継続が心不全予防において重要です。 定期的な運動での身体活動、体重管理、健康的な食生活、禁酒、節酒などは心不全発症リスク低下と関連します。身体活動と心不全発症リスクは用量依存性に逆相関します。 たとえば非運動者にくらべ、500MET・分/週の身体活動で心不全リスクは10%低下することが示されています。一般に心不全の発症リスクは、身体活動度と負の相関、そしてBMI(肥満指数)と正の相関があります。肥満は心不全の発症と関連します。
したがって減量や運動療法などの一般的な生活習慣の改善による心不全予防をおこなうことは必要です。食事療法では、植物性食品を中心とした食活動、野菜摂取頻度が多い食生活、DASH食(果物、野菜、低脂肪乳製品が豊富な食事)が心不全発症の低下と関連します。 したがってこれらの健康的な食生活は推奨されます。 高血圧やCKDの人は減塩が必要です。喫煙は心血管疾患の危険因子であり、心不全の人では禁煙が死亡率や心不全を含む心血管疾患の再入院率を軽減します。したがって喫煙者では禁煙が強く推奨されます。アルコールは軽度の摂取は心不全の発症リスクを軽減しますが、過度な摂取は心不全発症の危険因子とする報告があり、避けることです。多量の飲酒はアルコール性心筋症の原因となり、その場合には断酒が必要です。疾患の管理では、高血圧の治療が重要です。高血圧の治療は心不全の発症を抑制し、生命予後の延長につながります。減塩や運動での生活習慣の修正に加えて、降圧薬服用による治療をおこない、収縮期および拡張期血圧を管理することが推奨されます。心不全発症予防の効果が高いとされている薬にはサイアザイド系利尿薬がありますが、その他の薬の詳細は割愛します。 ナトリウム利尿ペプチドの測定は、心不全の危険因子を有する無症候の人では、心不全発症予防目的で推奨されます。
次にステージB(前心不全)では、構造的/機能的心疾患の進展および症候性の心不全の発症予防に重点がおかれます。したがってこれらへの適切な治療は進展予防に重要です。 治療はステージC(症候性心不全)への移行予防となりますが、移行の診断は、症状・徴候やナトリウム利尿ペプチド、心エコーなどでの客観的な評価が重要となります。なおステージBの人でも心不全の危険因子に対する治療はステージA、同様におこないます。 ステージBでは無症候性左心室の血液駆出率の低下した人や、心筋梗塞後の人が多く、それらの人に対する治療がおおむねステージBの人に対する治療に相当します。
服薬治療は、左心室の血液駆出率が40%以下の人は、心不全進展・発症予防のためにACE阻害薬(あるいはARB)、β遮断薬の、服薬を禁忌でない人すべてがされることが推奨されます。 一方 左心室の血液駆出率が保たれた心筋梗塞後の人では、これらの薬剤の心不全予防効果は現在不明です。今後の検証が待たれます。 その他、薬(特に心不全の人に有効とされている薬)も同様であり、やはり今後の検証が期待されるところです。
以上今回は心不全予防(ステージA・ステージBでの)について記載しました。