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お知らせ
心房細動 認知機能障害との関連
心房細動(AF)は、わが国でもっとも有病率の高い不整脈の1つで、加齢とともにその発症率は増加します。認知症有病率も昨今わが国で増加傾向にあります。認知症疾患のうち、アルツハイマー型認知症(AD)の発症率は女性で高く、男性のおよそ2倍とされています。認知症のリスク因子として、遺伝的因子や加齢、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの血管性リスク因子があげられています。近年、AFもまた認知症の独立したリスク因子であるとする報告が多く発表されています。2010年に米国の研究でAFの人の認知症発症率の上昇が認められています。また2018年の欧州、北米、アジア太平洋などの不整脈学会では、脳卒中既往のAFの人では、AFのない人に比べ、認知症や認知機能の低下のリスクが高いと報告されました。一方で脳卒中既往がないAFの人でも認知症が多くみられることより、脳卒中既往のないAFの人でもAFは認知症発症の独立したリスク因子であることが示されました。
AFの認知機能低下における性差については、いまだ一致した見解は得られていません。オランダ、スウェーデンや台湾の研究では、AFの人は女性は男性と比較して認知症のリスクあるいは発症率、およびADの発症リスクが有意に高いことが報告あるいは示されています。一方フラミンガム研究ではAFのある男性は女性と比較して認知機能のいくつかの領域で有意な低下を認め、また米国の研究ではAFの人における認知機能低下のリスクについては性差は認めていません。したがってAF、認知症と性差の関連については、今後のさらなる研究が待たれます。AFと認知症発症のメカニズムとしては、AFによる体内での炎症マーカーの増加やAFにより惹起される無症候性の脳血管病変、心臓(左心房)の不規則な収縮などによる心拍出量の低下を原因とする脳血流の慢性的な低下により引きおこされる脳の容量低下などがあげられています。さらにAFにより種々の機序を通じてアミロイド形成が促進されるということがあります。
AFの人の認知症発症予防法についてはいまだ確立されたものはありません。AFの人における血栓予防薬としての直接経口抗凝固薬(DOAC)を内服しているAFの人で、脳卒中および認知症の発症を低下させたとの報告もありますが、長期的な認知症発症の予防効果については不明です。
またAFに対してカテーテルアブレーションを受けた人は、受けなかった人よりも、ADや脳血管性認知症を含めた認知症の新規の発症が抑制されたとの報告がありますが、現状、女性は男性にくらべてアブレーション治療を受ける率が低いことが、欧米、わが国で報告されています。
したがって、今後AFの人(特に女性)における認知機能低下予防のための、カテーテルアブレーションを含めた治療と認知機能改善の関連について詳細な検討が必要です。以上今回は心房細動(AF)と認知機能障害について記載しました。
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