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お知らせ
(I)感染性咳嗽、(II)感染後咳嗽
(I)感染症に伴う咳はすべて広義の感染性咳嗽(咳)といえますが、X線やCTスキャンで肺炎、結核、腫瘍などの咳の原因となる陰影を認めず、感染に伴うことが示唆される咳を活動性のある狭義の感染性咳嗽と定義します。感染性咳嗽はウイルスや細菌などにより惹起される気道感染症(上気道炎、気管支炎、肺炎)による炎症の部分症状として咳がみられる病態で、咳は自然に消失するのが大きな特徴です。狭義の感染性咳嗽を疑う目安を以下にあげます。(咳以外に以下の症状を伴うかまたは先行する)発熱、鼻汁、くしゃみ、鼻閉、咽頭痛、嗄声、頭痛、耳痛、全身けんたい感など。また周囲に同様の症状の人がいる。咳に好発時間がないことが多いなどは参考所見となります。感染性咳嗽の多くは急性上気道感染症で、原因微生物の多くはウイルスが占めます。(ライノウイルスが最も多い) 急性気管支炎では新型コロナウイルス、マイコプラズマ、百日咳、クラミジアの頻度が増加します。急性上気道感染症の咳症状は、ほとんどが8週間以内に軽快します。感染性咳嗽の咳症状は以下になります。1.普通感冒ウイルス…この場合感染性咳嗽を疑うポイントは随伴症状、特に発熱です。上気道炎症状(鼻汁、くしゃみ、鼻閉、咽頭痛)の先行や、周囲に同様の症状の人がいることが参考になります。また咳の程度には日差があるものの好発時間はなく、終日続きます。自然軽快傾向も特徴です。膿性痰が出現することがありますが、痰の膿性化は症状の重症度と関連はなく、抗菌薬の使用は必要としません。2.マイコプラズマ…気管支炎が主体で、肺炎は10〜20%とされます。初発症状としては咳と咽頭痛が多く、経過中に痰、発熱もしばしば認めますが、鼻症状が少ない点が特徴です。3.百日咳…典型例では1〜2週間の潜伏期の後にカタル期(1〜2週間)、痙咳期(4〜8週間)、回復期(1〜2週間)の経過をとります。カタル期は感冒様症状を呈し、通常感冒との鑑別は困難です。痙咳期にはスタカートと呼ばれる発作性、連続性の咳と、咳の合間のレブリーゼという吸気時の笛声音を反復します。(レブリーゼを呈する頻度は多くはないが、認めると診断的価値は高くなる)咳は夜間に強く、嘔吐や空嘔吐を伴います。周囲に咳がみられることも診断の意義があります。一方、百日咳では発熱、または急性反応の存在や上気道炎症状の先行または随伴を認めないことが多いことも認識する必要があります。感染性咳嗽の治療は、3週間以内に消失する咳嗽の多くは呼吸器ウイルスが原因で、インフルエンザと新型コロナウイルスを除くと特異的治療は存在しません。抗菌薬が有効な感染性咳嗽の原因微生物は、マイコプラズマ、百日咳菌および肺炎クラミジアです。これらの3菌種の特徴は、家庭内や幼稚園、学校、職場などでの集団感染の原因となり、①周囲への感染力が強い②宿主によっては重症化する③有効な治療薬が存在することから、抗菌薬服用の適応となります。マイコプラズマは抗菌薬の反応は良好ですが、適切な抗菌薬投与にもかかわらず、重症化したり、抗菌薬に耐性を示すものもあります。最初に、使用した薬の効果が乏しく、その薬に対して耐性と判断された場合は、薬の変更により治ユ可能です。百日咳の治療では抗菌薬はカタル期には有効(患者さん自身に対して)ですが、痙咳期や回復期には効果がありません。この場合、抗菌薬は患者さん本人ではなく、除菌により周囲への拡散を防ぐ目的での使用が推奨されています。インフルエンザには5つの薬が使用可能であり、解熱効果がその使用の主要な目的となりますが、早期の使用で咳も改善します。COVID-19には3剤の経口薬と1剤の注射薬が使用可能です。その有効性を検討した報告では、咳を含む呼吸器症状を有意に短縮させ、さらに早期の使用は咳を含む後遺症を低減させるとされています。
(II)感染後咳嗽 とは 急性呼吸器感染症(特にかぜ症候群)の後に続く、胸部X線写真で肺炎などの異常所見を示さず、通常自然に軽快する遷延性(3〜8週間持続)ないし慢性(8週間以上持続)の咳嗽と定義されます。その原因は原因となる微生物の排除後も持続する咳嗽反応の神経経路の活性化と考えられています。感染後咳嗽の診断は①かぜ症候群が先行していること②遷延性咳あるいは慢性咳嗽を生じる他の疾患が除外できること③自然軽快傾向がある場合に診断されます。 感染後咳嗽の特徴として、乾性咳嗽(痰を伴わない)であること、中高年者や女性に多いこと、咳嗽の発現時間は就寝前か夜間、朝が中心であることなどが報告されています。成人の遷延性咳嗽に占める感染後咳嗽の頻度は、日本からは約35%との報告があります。感染後咳嗽は通常自然軽快します。遷延した場合の薬物療法では、活性化した咳の神経経路に特異的に作用する薬剤はないため、通常使用する中枢性の鎮咳薬、ヒスタミンH1、受容体拮抗薬(アレルギー性鼻炎に対する使用が多い)、抗コリン薬、漢方薬の麦門冬湯などによる非特異的治療が主体となります。それと同時に患者さんは禁煙やマスクの着用によって咳の誘発刺激をさけたり、飲水やあめ玉により喉を浸潤させることが推奨されます。咳がピークを過ぎており全身状態が良好で、遷延性から慢性咳嗽の誘因となる疾患が除外できていれば、無用な薬剤(抗菌薬や喘息治療薬)を服用することなく、自然治ユを待つことが肝要です。
以上今回は感染性咳嗽、感染後咳嗽について説明しました。
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