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脂質異常症  良好な服薬アドヒアランスの効果・重要性

病気に罹患した場合、罹患した人は自分の病気や治療法を理解し、薬を服用するだけでなく、積極的に治療に参加するすることが大事です。そして理解したうえで薬を服用することを服薬アドヒアランスといいます。今回は脂質異常症に対する服薬アドヒアランスの効果と重要性などを概説します。
脂質異常症に有効な効果を有するスタチンなどによる脂質低下療法のアテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症予防効果は証明されています。しかし実際に薬を処方された人が、その薬を服用しなければ、脂質改善効果が得られないのは当然で、心血管疾患予防効果も低下することが予想されます。海外で行われたスタチンに関する研究では、服薬アドヒアランスが90%以上と良好であった人では、10%未満の人とくらべ、4〜5年間の死亡率は45%低くなっています。わが国の研究でも、心血管疾患を罹患した人の再発予防(二次予防)において、80%の服薬アドヒアランスを達成した人では達成しなかった人よりも、心臟突然死、致死性/非致死性心筋梗塞の発症が有意に減少したことが報告されています。また医師やその他の医療従事者による指導などの介入により服薬アドヒアランスが向上し、介入のなかった人と比較して、6ヶ月未満で総コレステロール(TC)とLDL-コレステロール(LDL-C)がそれぞれ17.15mg/dL、19.51mg/dL、6ヶ月以上でTCが17.37mg/dL低下したことが海外からの研究で示されています。そしてLDL-Cの治療目標値を100mg/dLとした際の達成率が服薬アドヒアランスと有意に相関し、目標値を達成していた人で服薬アドヒアランスが有意に高いことも報告されています。ASCVDの発症に関しては、海外の研究で、脳卒中による死亡が高コレステロール血症の人のうちスタチンの服薬アドヒアランスが80%未満と低い人では、2.04倍と上昇し、高血圧を合併する高コレステロール血症の人ではスタチンのみの服薬アドヒアランスの不良の人では1.82倍、スタチンと降圧薬の両方の服薬アドヒアランス不良の人では7.43倍と上昇することが報告されています。その他の多数の研究においても良好な服薬アドヒアランスが心血管疾患の発症の減少や良好な予後と関連しています。それでは服薬アドヒアランスに影響する因子は何なのでしょうか。海外からの研究解析では年齢や性別、収入、併存疾患の治療を、受けているかなどの因子より違いがあることが明らかになっています。服薬アドヒアランスは女性や低収入者で低く、年齢では50歳未満と70歳以上で低くなるU字型の分布を示しています。心血管疾患の既応のある二次予防の人では服薬アドヒアランスが高く、一次予防の人では低い、また脂質検査の頻度が高いことや支払い額が少ないことも服薬アドヒアランスと関連していました。薬剤間でも違いがあり、高トリグリセライド血症(EPA製剤を含む)の薬はスタチンと比較すると服薬アドヒアランスが低いことが知られています。
服薬の中断は治療開始後1〜2年でおこることが多く、その後は減少すること知られています。たとえばスタチンの服用開始後の服薬アドヒアランスは3ヶ月で79%、1年で50%に低下したが、10年では42%であったことが報告されています。しかし服薬中断率が高いことは上記の通りで事実です。したがって服薬アドヒアランスを高めることは重要です。これに関しては我々医療従事者の責務も多大に関係しています。つまり女性や若年者、高齢者、一次予防の人などの服薬アドヒアランスが低い人に対しては、食事・運動療法などの生活習慣改善の指導に加えて、脂質異常症と心血管疾患発症との関連についてていねいに説明し、治療の目的を理解してもらうことが必要です。特に治療開始後1〜2年間は、治療の必要性をくり返して説明し、服薬の中断を防ぐことが医療従事者の責務となります。
当院では、すべての脂質異常症の人に対して、上記のことおこなっており、高血圧や糖尿病などASCVD発症リスクのある人に対しても同様です。したがって当院に受診されてこられる方とは一緒に病態と対峙しています。
以上今回は脂質異常症をとりあげ良好な服薬アドヒアランスの効果と重要性について、説明しました。