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慢性腎臟病  たんぱく質摂取制限は必要か

過剰な、たんぱく質の摂取は糸球体濾過量(GFR:1分間に腎臓の糸球体がろ過する血液の量で腎臓の機能を示す指標)の増加から糸球体の過剰なろ過の原因となり、また進行した腎不全の人においては、たんぱく質の代謝産物である窒素化合物が尿毒症物質として蓄積することと関連します。たんぱく質の摂取量を減少させることによって、糸球体の過剰なろ過に対する効果として、腎機能の低下および尿蛋白の抑制、尿毒素の蓄積の抑制から腎代替療法(透析など)の開始の遅延につながる可能性があります。そのため腎機能の低下した人においては腎臓の保護、尿蛋白の抑制、尿毒症物質の蓄積の抑制、または腎代替療法の開始の遅延を目的に、たんぱく質の摂取量を制限する低蛋白質食(LPD)が行われてきました。そして従来の多くの研究結果をもとに慢性腎臓病(CKD)の進行を抑制するためにLPDなどによるたんぱく質摂取量を制限することが推奨されました。たんぱく質摂取制限の目安となるたんぱく質の量は腎臓の機能の程度により0.8〜1.0g/kg/標準体重/日(軽度〜中等度腎機能の低下した人)、0.6〜0.8g/kg標準体重/日(中〜高度腎機能の低下した人)が示されています。そしてそれ以降の研究結果の評価においても、CKDの人に対するたんぱく質摂取の制限は、末期の腎不全への進展抑制に対して有効である可能性があり、GFRの低下抑制に対しても有効である可能性があるとされています。しかし長期間・高齢な人がたんぱく質摂取量の制限を行うことはBMI(体格指数)の低下と関連する可能性が示唆されているため、得られる効果と懸念される悪影響を考慮する必要があります。また一方で、たんぱく質摂取量を制限するにあたって、複数の課題が存在します。第1にはエネルギー摂取の重要性です。複数の研究ではLPDとBMIの減少との関連が示唆されています。このことはLPDを行った人が、推奨されるエネルギー摂取量よりも少ないエネルギーしか摂取していなかったことが考えられます。エネルギー摂取の減少は栄養状態が悪化するだけでなく、体蛋白の崩壊による窒素化合物の血中への増加がもたらされる懸念があります。このため、たんぱく質の摂取制限を行う場合、十分に摂取エネルギーを確保することが重要です。第2に蛋白質摂取制限を行う人の治療意識(アドヒアランス)の向上です。多くの研究でたんぱく質制限をおこなった人のたんぱく質摂取量が、目標とするたんぱく質の制限量よりも多くなっていました。たんぱく質摂取制限が適正に行われたときにのみGFRの低下抑制効果が得られていたとの報告もあり、アドヒアランスの向上は大きな課題です。第3に栄養状態の悪化に対する懸念があります。腎機能の低下した人では、しばしばサルコペニア、フレイル、PEW(体たんぱく質や体脂肪が減少する状態)といった病態が認められます。栄養摂取量の低下は、その増悪因子として非常に重要です。一般的に高齢な人ほど食欲が低下していることが示されており、LPDによって食事摂取量が減少すると、さらなるサルコペニア、フレイル、PEWなど低栄養・消耗状態の進展をもたらす可能性があります。したがってサルコペニアなどを合併したCKDの人は、個々の病態における末期腎不全のリスクなどを考慮され、たんぱく質摂取制限の優先・緩和を検討される必要があります。第4にたんぱく質摂取制限を行うにあたり、定期的にその経過を観察・記録し状況を把握すること(モニタリング)の重要性です。多くの研究でLPDを行なった時に、血清アルブミンは低下していないが、BMIの低下が報告されています。このためLPDを行う場合は、たんぱく質・エネルギーの摂取量を含む食事摂取量や栄養状態の定期的モニタリングを行い、食事療法を適切に行っているかを評価する必要があります。
上記のような課題が存在するため、たんぱく質の摂取制限は画一的に行うのではなく、個々の人は自身のCKDの重症度や、サルコペニア、フレイル、PEWなどの病態・栄養状態を評価し、制限の程度を判断することが必要です。したがって現在においてはCKDの人におけるたんぱく質の目標摂取量は一律には設定されていません。
以上今回はCKDの人におけるたんぱく質制限の推奨・課題に関して記載しました。