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高血圧  有酸素運動とレジスタンス運動に降圧の差はあるのか?

高血圧の人の降圧に対する運動療法としては、中等度の有酸素運動が推奨されてきました。しかし最近では有酸素運動に加えてダイナミック運動(関節を動かしながら一定の力を筋肉にかけて行う筋肉のトレーニングで等張性運動ともいう)やアイソメトリック運動(関節を動かさないで筋肉に力をいれる筋肉のトレーニングで等尺性運動ともいう)でも有意な降圧効果があり、さらにそれらを組み合わせた複合運動でも有意な降圧効果があることが報告されています。わが国の脳心血管病による死亡数への各種危険因子の寄与に関する報告によると、第一位の危険因子は高血圧、第二番目は身体的不活動となっています。したがって運動によって降圧できれば、死亡数を大きく減少させることが期待されます。わが国では1980年代より高血圧の人に対する運動療法の効果が検証されそして運動療法が推奨されてきました。世界的には1991年にWHOのガイドライン、1993年に国際高血圧学会や米国の高血圧合同委員会のガイドラインで高血圧の人に対する運動を推奨するという記載になりました。(それまでWHOガイドラインでは運動の降圧効果は確かでないとされていた)
運動による降圧の機序は血圧を上昇させる交感神経系などの抑制と、血圧を下降させるホルモン系の活性化による心拍出量の減少や末梢血管抵抗の抑制が関与することが報告されています。そしてこれまでは降圧をもたらす運動の種類・強度として有酸素運動で軽度〜中等度強度の持久力運動(ウォーキング、ジョギング、エアロビクスダンス、スイミングなど)が推奨されてきました。しかし最近では、ストレッチ運動や筋力トレーニングといったレジスタンス運動(ゴムチューブやボールを用いた低強度のレジスタンス運動、自重を利用したスクワットやカーフレイズ、ウエイトや機器を用いるもの)の降圧効果が多数報告されています。2020年には国際高血圧学会から有酸素持久力運動とレジスタンス運動やそれを組み合わせた運動療法の推奨が行われました。しかし有酸素運動とレジスタンス運動の降圧効果を比較した推奨ではありません。そのため最近の多くの報告を運動の種類により有酸素運動群、レジスタンス運動群および有酸素運動とレジスタンス運動の複合運動群に分けた血圧の変化をわが国の高血圧学会が検証しました。結果は全対象者の収縮期/拡張期血圧の低下は-7.5/-4.4mmHgでした。うちわけをみると有酸素運動群では-7.9/-4.7mmHg、レジスタンス運動群では等張性運動群-6.4/-3.2mmHg、等尺性運動群-6.3/-3.5mmHg、複合運動群-7.6/-4.7mmHgであり、収縮期血圧/拡張期血圧の降圧効果に、運動の種類によって有意な差は認めませんでした。このことは高血圧の人に対する運動療法では、有酸素運動、レジスタンス運動(等張性運動と等尺性運動)、複合運動ともに有意な降圧効果を認め、運動の種類による降圧効果に差がないことを示しています。したがって高血圧の人は自身の背景となる状態を考慮しながら、個別に運動の種類を選択することが可能であり、またその運動が推奨されることになるのです。
以上今回は、高血圧の人に対するレジスタンス運動と有酸素運動の降圧効果について記載しました。