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脂質異常症・治療と脳血管障害

脂質低下薬であるスタチンが脳卒中の発症予防に重要であることは確立していますが、脳卒中の再発予防についての研究は多くはありません。欧米で行われた研究では、スタチンによるコレステロールの低下療法に伴い脳梗塞は19%と有意に減少したことが示されています。一方で脳出血は有意な変動は認めてません。わが国で行われた冠動脈疾患(CAD)または脳卒中の既往を有さない高コレステロール血症の人を対象として研究では、スタチン投与により脳卒中発症が0.66倍(男性)、0.63倍(女性)と減少傾向を示しました。特に男性の虚血性脳卒中と55才以上の女性の脳卒中は有意に減少しました。脳卒中の既応のある人を対象として脳卒中の再発を研究した試験はあります。その中の海外の研究では、CADのない発症後6カ月以内の脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)既応の人を対象に高用量のスタチンで治療し、脳卒中の再発率をスタチンで治療しなかった人と比較した研究があります。研究の結果はスタチンで治療を受けた人ではLDL-コレステロール(LDL-C)が平均73mg/dlと強く低下し、そして脳卒中の再発が治療を受けなかった人と比べ16%と有意に減少しました。さらにCAD発症率も35%有意に減少しました。減少した脳卒中の内訳では脳梗塞が有意でした(22%減少)。しかし脳出血では有意な増加(約1.66倍)が認められてます。ただし脳出血の増加とLDL-Cの間には関連がなかったとされています。本研究ではスタチンによる治療によりLDL-Cが研究開始時の50%未満に低下または70mg/dl未満に低下した人で脳卒中再発が有意に抑制されることが示されました。再発が抑制された脳卒中の病型では、アテローム血栓症脳梗塞、ラクナ梗塞、TIAともに同程度でした。日本人の心原性脳梗塞を除く脳梗塞の人を対象として中等度の強度のスタチンによる治療を受けた人とスタチンによる治療を受けなかった人を比較した研究では、脳卒中、TIAの再発は両者において差はありませんでしたが、スタチンによる治療を受けた人では、アテローム血栓性脳梗塞の発症率は有意に減少しました(約67%減少)。一方頭蓋内の出血の発症率は両者で差は認めませんでした。この研究では、LDL-Cが80〜100mg/dlで最も脳卒中の再発が少ない傾向が示されています。他の研究においてもLDL-Cを厳格に管理された人(70mg/dl未満)で脳梗塞、心筋梗塞等のリスクの有意な低下が示されています。その他スタチンとエイコサペンタエン酸(EPA)(n-3系多価不飽和脂肪酸)で治療された人はスタチン単独で治療された人と比べ脳卒中の再発が約20%有意に抑制された、スタチンでの治療中に発症した脳梗塞の転帰は良好、スタチンの治療の中断により脳梗塞発症リスクが増加する、などの報告も認められます。脳血管障害はその発症の最も大きなリスクは高血圧であり、血圧を良好にコントロールすることは重要です。また心原性脳塞栓症では心房細動が、くも膜下出血では高血圧に加えて喫煙、多量飲酒、脳動脈瘤などの存在が大きなリスクとなり、これらに適切に対応することが必要です。それに加えて欧米では非心原性脳梗塞の予防のために、脂質を低下させることが推奨されています。わが国においても@アテローム血栓性脳梗塞の割合が増加していることA脂質異常症の人におけるスタチンによる脳梗塞予防効果が認められることBアテローム性動脈硬化を背景とした脳梗塞の再発予防には厳格な脂質低下療法の有用性が示されてきている事、などから脳梗塞予防のためにも、十分な降圧(高血圧の人)とともに、脂質異常症の人では適切な脂質の管理を行うべきとされています。そしてアテローム動脈硬化を伴う非心原性脳梗塞の人の再発予防にはLDL-C 100mg/dl未満の管理が推奨されているのです。
以上、脂質異常症は非心原性脳梗塞の大きな原因となり、その管理は重要となります。ご留意下さい。