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腎デナベーション 降圧作用としての位置づけ

腎デナベーションとは治療抵抗性高血圧(利尿薬を含む降圧作用の異なる3剤の降圧薬を使用しても血圧が目標値まで下がらないもの)に対し、腎動脈の周囲(外壁)にある交感神経を血管内に挿入したカテーテルで高周波・超音波などを照射して焼灼することにより血圧を下げる治療法です。腎デナベーションは2007年に初めてヒトに対して使用され、高血圧に対する画期的な治療法とされました。初期の同法による実証試験では、著明な降圧作用が認められましたが、その後の研究ではこの結果は確認されませんでした。その後カテーテルの改良やカテーテル操作時の技術的な見直しなどが行われ、また腎デナベーションを行う対象者を治療抵抗性高血圧の人から降圧薬未使用の人、降圧薬を1〜2剤服用している高血圧の人などに広げた腎デナベーションの試験が行われました。その試験の結果は以下でした。自由行動下血圧測定(ABPM)による24時間の収縮期血圧が0.81mmHg低下し、24時間の拡張期血圧が1.47mmHg低下した(有意な低下)。ABPMによる日中の収縮期血圧が3.17mmHg、日中の拡張期血圧が1.88mmHgと有意に低下した。また夜間収縮期血圧も3.41mmHg、夜間拡張期血圧も1.61mmHgと有意に低下した。診察室での血圧は収縮期血圧が4.95mmHg、拡張期血圧が2.79mmHgと有意に低下した。家庭血圧では家庭での収縮期血圧が4.64mmHgおよび拡張期血圧が2.28mmHg低下した。上記の24時間収縮期および拡張期血圧、診察室での収縮期血圧および拡張期血圧に対する腎デナベーションの効果は、降圧薬を服用している人と服用していない人で一貫して差は認めていません。また腎デナベーションの方法(超音波、ラジオ波(高周波))でも降圧に有意な差はありませんでした。したがって今回の試験の結果は、腎デナベーションが治療抵抗性高血圧、コントロール不良の高血圧、未治療の高血圧の人において、腎デナベーションを行わなかった人と比較してすべての血圧のパラメータを有意に低下させることを示しています。そして夜間の収縮期血圧の低下が示されたことは、腎デナベーションが高血圧の人の心血管疾患の発症のリスクを低減することが示唆されます。またこの試験では診察室収縮期血圧が腎デナベーションで約5mmHg低下しています。心血管疾患の有無にかかわらず、収縮期血圧が正常(120mmHg未満)または正常高値(120〜129mmHg)でも、5mmHgの低下は脳心血管疾患の発症リスクが約10%減少することが報告されています。したがって腎デナベーションは臨床的に意義のある降圧効果をもつといえます。さらに腎デナベーションの24時間血圧および診察室血圧の低下効果は、降圧薬を服用している人と服用していない人で一貫していました。腎デナベーションの治療において、しばしば薬剤の服薬の継続性が問題とされますが、本試験の結果は降圧薬による降圧効果とは独立した腎デナベーションの降圧効果を裏づけるものです。腎デナベーションは2023年の欧州高血圧学会では治療抵抗性高血圧に対する治療のオプションの位置づけとされています。米国では2023年11月に2つの腎デナベーションの装置が高血圧治療の補助療法としてFDA(米国食品医薬品局)に承認されています。わが国では2025年9月に治療抵抗性高血圧に対して薬事承認されました(一社が)。腎デナベーションは上記に記載したように、治療抵抗性高血圧への補助療法としての選択肢となり、今後の発展展開が期待されます。
以上今回は腎デナベーションに関して記載しました。