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お知らせ
脳卒中 睡眠時無呼吸との関係・治療
脳卒中や一過性脳虚血発作の既往がある人は高率に睡眠呼吸障害(SDB)を有していることが知られています。SDBは脳卒中を含めた血管疾患のリスクを上昇させる可能性があり、実際にSDBは脳卒中の独立したリスク因子であると報告されています。したがって脳卒中の予防のためには適切なSDBの診断と治療を行う必要があります。
SDBが脳卒中発症のリスクを上昇させるメカニズムは、SDBによる気道抵抗の増大や低酸素・高炭酸ガス状態により、覚醒反応の繰り返しが起こり、交感神経の亢進や酸化ストレスが増加します。交感神経の亢進は無呼吸の覚醒と呼吸再開に一致して認め、一過性です。しかし頻回の無呼吸は、繰り返し交感神経の活動を亢進させ、重症の人では日中の交感神経活動の亢進の原因となります。
SDBの人は高血圧(24時間血圧計での測定)(夜間に血圧がさがらないノンディッパータイプ)になることが多く、早朝高血圧を認めます。睡眠中の無呼吸に一致して血圧が200mmHg以上にまで急上昇することも報告されています。このような交感神経亢進は、重症のSDBの人の場合、一過性ではなく日中も持続するようになり、血圧上昇や耐糖能異常(糖尿病及び予備軍を含む)、脂質異常などメタボを介したアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞、脳出血の罹患が増加します。
またSDBは心房細動発症のリスクであり、それによる心原性脳梗塞も重要です。SDBの人はAHI(無呼吸低呼吸指数)≧5の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)があると、脳卒中および死亡のリスクはOSAのない人とくらべ約2倍になるとの報告や、AHI≧5あるだけで脳卒中発症リスクが2.89倍高まるとの報告があります。脳卒中の病因別割合は小動脈閉塞>大動脈閉塞>出血>心原性と報告されており、OSAの人はそうでない人とくらべ、小動脈閉塞によるラクナ梗塞が多いとされています。またSDBは血管性認知症のリスクも増加させます。
脳卒中の発症時間別検討では、起床時に脳卒中症状を認めた人は、日中覚醒時に脳卒中を発症した人より有意にOSAの合併が多く、OSAは睡眠中に脳卒中を起こしやすい要因であると考えられます。
脳卒中予防のためにOSAのための治療であるCPAP(持続陽圧呼吸療法)治療の有効性に関する研究では、治療をする人と治療をしない人で差は認めませんでした。しかしCPAPを十分に使用したOSAの人では脳卒中発症が減少しており、CPAPに対する使用時間などのアドヒアランスが問題となるようです。
脳卒中発症後の人もSDBの合併が多いことが報告されています。一過性脳虚血発作をおこした人のSDBの有病率は、そうでない人とくらべ有意に多いとされています。同様に急性の脳梗塞や一過性脳虚血発作を発症した人ではAHI≧5のSDBが約63%と高率に認められています。
また脳卒中におけるOSAの合併率はAHI≧5で75%、AHI≧15で57%と報告されています。脳卒中の急性期では脳卒中自体による呼吸中枢などに対する脳障害の結果、OSAのみならずCSA(中枢性睡眠時無呼吸)が引き起こされる可能性があります。実際、脳卒中後のリハビリテーション目的で入院した人の検討では、OSA、CSA、その混合型の合併頻度が各々17%、21%、15%であったと報告されています。脳卒中の二次予防にもCPAP等のSDBに対する治療が必要であると考えられます。
脳卒中後の人においても軽症のOSAであれば、非脳卒中の人と同様に減量や体位変換療法などを行い、軽症から中等症の場合、あるいは比較的やせ型の人ではOA(口腔内装置)を作成することもあります。中等症から重症のOSAの人に対しては非脳卒中の人と同様にCPAP治療等を検討します。
脳卒中後のSDBを合併した人にCPAPを使用し、生命予後を検討した研究では、1〜2ヵ月程度の短期間のCPAP使用で、一晩あたりのCPAP使用時間の短い研究では、神経学的機能に有意な改善は認めませんでした。しかしCPAPが平均5時間程度使用された研究では、CPAPを使用しなかった人とくらべ、CPAPを使用した人では神経学的機能の改善が示されています。
またCPAP治療を行った脳卒中後のOSAの人は、CPAP治療を行わなかったOSAの人とくらべ有意に認知機能の改善を認めた研究報告も複数あります。しかしこれらの研究は少人数での研究が多く、また神経学的機能の改善が認められなかった研究も多くあります。したがって脳卒中後の人のSDB治療により生命予後の改善は期待されていますが、そのためには今後の十分なCPAP使用状況を維持した大規模な研究の報告が待たれるところです。
以上、今回はSDBと脳卒中との関連・治療について概説しました。
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