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お知らせ
心房細動カテーテルアブレーション 後期高齢者(特に80歳以上)への施行の是非
加齢は心房細動発症の主要な危険因子であり、高齢者における心房細動の有病率は高いことは知られています。
心房細動の治療であるカテーテルアブレーションは侵襲的な治療であるため、身体的予備能が低く、併存疾患が多い高齢者では、その施行は慎重であるべきですが、現実的には心房細動でカテーテルアブレーションを受ける人に占める高齢者の割合は著しく増加しています。本邦で心房細動でカテーテルアブレーションを受けた人における75歳以上の人の割合は、2011年の8.5%から2021年には28.3%に増加していました。このような高齢者における心房細動カテーテルアブレーションの急速な普及が適当か否かを検証することは重要な臨床的課題と考えられます。
カテーテルアブレーションの施行を判断する場合、高齢者においても、症状の評価は重要です。動悸・息切れなどの心不全症状や、心房細動にともなう心臓の機能低下によるQOL(生活の質)やADL(日常生活動作)の低下を認めないかが確認されます。そして高齢者の全身状態(フレイル、認知能力、併存疾患)は個人差が大きいため、個々の人において全身状態の評価と心房細動の進行度(持続期間、左心房の機能低下など)が勘案されます。そしてカテーテルアブレーションにより得られる利益(症状の改善)とリスク(有害事象を含む)が包括的に検討され、その上でカテーテルアブレーションの施行が当事者との共有意思決定を経て選択されます。
カテーテルアブレーションを施行した場合の利益は、アブレーション後の心房細動の非再発率、QOLの改善、生命予後の改善でそれが検討されます。有害事象では、カテーテルアブレーション施行時の手技にともなう合併症が検討されます。
まず利益としての非再発率の検討では、カテーテルアブレーション後の心房細動の再発率を高齢者と非高齢者で比較した研究があります。それらでは、年齢は心房細動の再発と関連があるとする報告と、心房細動の再発率に両者で有意差を認めないとする報告が混在しています。このことは適切にアブレーションを施行する高齢者の選択を行った場合には、合理的な非再発の有効性が期待できることを示しています。
QOLの検討では、カテーテルアブレーションが症状のある心房細動の人のQOLを有意に改善することは過去に示されています。高齢者と非高齢者でカテーテルアブレーションを施行した人と、アブレーションを施行せず薬物などの保存的治療を行った人とを比較した場合、アブレーションのQOLの改善の優位性は一貫しています。したがって症状のある心房細動の人においては、年齢にかかわらずカテーテルアブレーションでQOLが改善することが見込まれます。
生命予後の改善では、心房細動カテーテルアブレーションが施行された人の生命予後を改善するという証明はされていません。カテーテルアブレーションと薬物治療を比較した研究では、若年者ではカテーテルアブレーションを施行した人のほうが生命予後は良好でしたが、高齢者ではその傾向は認められませんでした。心不全を合併した人において、心房細動カテーテルアブレーションが全死亡や予期しない心不全入院を大幅に減少させうることを示した研究においても、高齢者(≧65歳)ではこのような効果は認められませんでした。高齢者では、心房細動以外の要素が生命予後に影響している可能性が考えられました。
次に有害事象としてのカテーテルアブレーションの手技にともなう合併症を考えます。カテーテルアブレーションの安全性を高齢者と非高齢者で比較した研究では、年齢は一貫して合併症の独立予測因子でした。またわが国の研究でも、年齢は合併症と関連しており、60歳未満の人と60〜64歳の人との比較においても合併症の発症率に有意差が認められました。85歳以上の人における合併症発症率(6.8%)は60歳未満の人の発症率(2.5%)の約2.8倍でした。カテーテルアブレーションの全体の合併症発症率の調査では5.8%と報告されており、それから考えると85歳以上の人におけるアブレーション施行が不適当とするほど著しく高くはありません。しかし非高齢者と比べた場合、より慎重な適応の判断が求められます。
以上より、高齢者に対する心房細動カテーテルアブレーションは合併症リスクは高いものの、心房細動の抑制効果は非高齢者と大きな差はないと考えられます。したがって高齢であることのみを根拠にカテーテルアブレーションが不適当とはいえません。またカテーテルアブレーションによる規則的な心臓の拍動の維持効果によりQOLは改善が期待できます。しかし生命予後改善効果は明らかではありません。このため、高齢者における心房細動カテーテルアブレーションは、その施行によりリスクが高くないと想定される壮健な早期の心房細動の人に対して、心房細動によって低下したQOLやADLを回復させることを目的として行われるべきと考えられます。
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