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心不全と併存する心臓弁膜症 その治療

高齢社会において、心臓弁膜症、特に動脈硬化と関連する大動脈弁狭窄症(AS)や、左心室の機能低下や心房細動と関連する僧帽弁閉鎖不全症(MR)が増加していますが、十分に診断はされていません。しかし心臓弁膜症を原因とする心不全は、根本治療ができる可能性があるため、正しく診断してもらうことが重要となります。

心不全という観点から弁膜症の治療を考える場合、1)弁の異常が心不全の主となる病態である場合(ASや大動脈弁閉鎖不全症(AR)、弁に器質的な異常が存在する(一次性という)MR)、2)心筋の障害や、弁が心室や心房に付着する部位(弁輪という)の拡大が心不全の病態であり、その結果として、二次的に弁膜症が生じる場合(二次的MR、二次性三尖弁閉鎖不全症(TR))があり、この二つに分けて考える必要があります。

a. 弁の異常が心不全の主病態となる病態である場合:基本的には心不全を呈する重症な弁膜症は介入(治療)(外科的治療またはカテーテルを用いた治療)の適応です。薬物による治療が症状の改善に有用であることもありますが、それをうけることにより、むやみに手術の時期を遅らせるべきではないとされています。中等症の弁膜症に心不全が合併している場合、現時点では基本的には、弁に対する介入の適応はありません。そして薬物治療を強化することになります(MSは中等症でも心不全の原因となり、介入の適応となるが)。

b. 心筋の障害が心不全の主となる病態である二次的に発生した弁膜症の場合:心不全に対する薬物治療が最大限に行われ、そのうえで弁膜症に対する介入の必要性が検討されます。したがって弁膜症が重症で、心不全憎悪に大きく関わっていると判断された場合には、弁膜症に対する介入も考慮されます。

次に個々の弁膜症が心不全に関与した場合について記載します。

AS:重症のASは左心室の肥大や進行すると左心室の機能障害を生じます。それにより左心室の壁運動の低下を生じます。重症ASに対しては生命予後を改善させる薬物治療はなく、非薬物治療が主体となります。

AR:重症のARでは左心室の拡大、それによる遠心性肥大(左心室の拡大により、心室を構成している筋膜が薄く外側へ引き伸ばされた状態)、そして進行すると左心室の心筋障害による左心室の壁運動低下が生じます。重症のARでは薬物治療を行うことでむやみに手術の時期を遅らせないことが原則となります。全身状態などから外科手術による治療が困難である場合や、診断時に左心室の機能低下を伴っている場合では薬物治療が行われます(薬物の詳細は略)。手術介入が行われ、手術後に左心室の機能低下が残存した人では、心不全薬物治療は続行されます。

MR:一次性の重症MRでは、薬物治療でむやみに手術時期を遅らせないことが原則となりますが、全身状態などから外科手術やカテーテルによる治療が困難である場合には、症状の改善目的に薬物治療(詳細は略)が行われます。二次性(機能性)MRでは、左心室の収縮能の低下に伴う心室性機能性MRと、心房細動などに伴う心房や弁輪の拡大が原因となる心房性機能性MRに分けられます。心室性機能性MRの治療では、左心室に病変の本体があるため、左心室の機能低下に対する十分な薬物治療が最も重要となります(MRを止めることが必ずしも本質的な治療になるわけではないため)。その後にカテーテルによる治療や外科的な僧帽弁形成術などが検討されます。症状のある心房性機能性MRの治療では、まず心房細動および心不全に対する薬物治療を十分に行うことです。そのうえで僧帽弁に対するカテーテル治療、外科治療や心房細動に対するカテーテルアブレーションなどが検討されます。

MS:MSは従来リウマチ性が主体でしたが、近年高齢者では弁輪の変性(石灰化などによる)が増加してきています。治療では心拍数をコントロールすることが特に重要となり、また心臓のうっ血を軽減することも重要です。そのために薬物治療が行われます。そして重症度に応じて外科的治療やカテーテルによる治療が検討されます。

TR:高齢化とともに、心房細動に伴って生じるTRなどが増加しています。TRは多くの心臓病の生命予後の規定因子となります。手術による成果が優れないため、利尿薬を中心とした内科的治療が基本でしたが、早期に外科的治療あるいは最近使用が承認されたカテーテルによる治療を考慮すべきという意見もあります(TRは生命予後を規定するため、その非薬物治療は現在進行段階にある)。

以上、今回は心不全とそれに弁膜症が併存した場合の治療などに関して記載しました。