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お知らせ
高血圧者 減塩目標は6g/日未満あるいはさらに少量?
食塩の過剰摂取が血圧上昇や脳心血管病発症・進展のリスク要因となることは明白であり、多くの研究で減塩による降圧効果は証明されています。
日本の高血圧学会では、高血圧の人の減塩目標を6g/日未満にすることを提唱しています。しかし減塩による降圧には用量依存性があり、米国では一般人および高血圧の人のいずれも減塩3.8g/日未満を目標としています。一方、欧州では高血圧の人の減塩目標を5g/日未満としており、WHOは一般の人を含め、成人の減塩目標として5g/日未満を推奨しています。すなわち、疫学的には減塩目標を6g/日未満からさらに引きさげることにより血圧のさらなる低下が期待されるのです。しかしわが国の令和5年の国民健康・栄養調査をみると日本人の食塩摂取量は、男性10.7g/日、女性9.1g/日と依然として多く、国民レベルでの減塩推進は重要な課題です。
健康日本21(第三次)では、食塩摂取量の目標を令和14年度までに第二次の8.0g/日から7.0g/日に強化しています。また一般国民を対象とした「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では食塩摂取量の目標を男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満としています。この基準では、18歳以上の成人のエネルギー必要量は、身体活動レベルに応じて男性1850〜3150kcal/日、女性1450〜2650kcal/日が提唱されています。そしてProtein(たんぱく質)、Fat(脂肪)、Carbohydrate(炭水化物)のPFCで構成されるエネルギー産生栄養素の摂取比率はP 13〜20%:F 20〜30%:C 50〜65%に配分することが推奨されています。
このようなエネルギー必要量とPFC比率を保証したうえで減塩6g/日未満を達成することは、日本人の食生活の現状を考えると容易ではありません。わが国の高血圧の人186人を対象として減塩指導を行ない、食塩摂取量の評価を平均約8年の観察期間で10回実施した報告では、食塩摂取量の経時的な減少は認めたものの、男性の40%、女性の27%は一度も食塩摂取量の6g/日未満を達成できず、5回以上6g/日未満を達成できた人は男性の7%、女性の19%にすぎませんでした。このことからも減塩目標6g/日未満の達成が容易でないことが示唆されます。
食塩摂取量は体重が大きな規定因子であり、エネルギー摂取量が多い男性や高体重の人ほど減塩目標の達成は困難と考えられるのです。日本人の日常の食事で考えてみると、たとえば、身体活動レベルがいわゆる「ふつう」の70歳の人の場合、エネルギー必要量である男性2350kcal/日、女性1850kcal/日の食事を適切なPFC比率を保ち、かつ持続可能で満足できる内容としたうえで食塩6g/日未満を達成するためには、減塩調味料・加工食品の利用や調理過程でのさまざまな工夫が必要で、その達成は容易ではありません。また減塩を優先させることで低栄養、フレイル、サルコペニアなどの不利益が生じるリスクは避けないといけません。したがって管理栄養士など専門家による指導・支援が得られる環境がない場合には、減塩目標は6g/日未満よりさらに下げる必要はないと考えられます。
以上、今回は高血圧の人の減塩目標について、最近の推奨を記載しました。
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