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お知らせ
心房中隔欠損(ASD)
心房中隔欠損(ASD)は心臓の左右の心房のレベルで血流の短絡をきたす疾患です。先天性心疾患の7〜13%、40歳以上では先天性心疾患の35〜40%を占め、約2:1で女性に多くみられます。心房中隔の中心部(卵円窩)に欠損を認める二次孔欠損がもっとも多く、ほかに一次孔(心房中隔の前下面にある)欠損などがあります。小児期から若年成人期では多くの人で無症状であり、早期に発見されず遅れて見つかることも多く認めます。欠損孔が診断時に10mm以上ある人では、ほとんど自然には閉鎖しません。
心房間を短絡して流れる血液の量と方向は、欠損孔のサイズと左右の心房間の圧力の差、左右心室の広がる余力、肺血管抵抗などによって規定されます。また加齢とともに修飾因子が加わり、左右の短絡量や方向が変化します。通常は左心房から右心房へ血液が短絡する左右短絡が主体ですが、肺高血圧の合併により右左短絡(右心房から左心房への血液の短絡)がみられる場合があります。一方で、加齢や高血圧、冠動脈疾患などの合併により、左右短絡の増加がみられることもあります。また40歳以降では心房細動や心房粗動などの不整脈発生の頻度が増加し、脳梗塞や心不全といった病態の悪化に関与します。高齢者では大動脈の蛇行などによる右左短絡の出現から生じる低酸素血症が問題になる場合も散見されます。
ASDの約30%が何らかの先天性心病変を合併するため、それらを見落とさないように診断される必要があります。ASDを無治療で放置した場合、右心不全、不整脈、肺高血圧を合併します。根治治療としては、外科的欠損孔の閉鎖手術が有効性と安全性が確立されています。一方、二次孔欠損では、2005年からわが国に導入された経皮的ASD閉鎖術が外科的閉鎖術と並び標準治療となっています。
ASDの臨床症状は、上記にあげた心不全、脳梗塞による麻痺、低酸素血症による症状はありますが、初期症状としては動悸、息切れ、疲労感を多く認めます。身体所見は医師が聴診した場合の心臓の雑音であり、体液の貯留を伴う場合には両側下腿の浮腫を認めます。検査は心電図、胸部X線、心エコー図検査、CT、MRI、そして必要に応じて心臓カテーテル検査が行われ、それにより診断、ASDの病態の評価がされます。
治療は内科的治療では心不全症状、体液貯留がある場合には、利尿薬による治療が行われます。高血圧を合併している人では降圧薬の服用をしていただき、末梢の血管の抵抗の低下が図られます。心房細動を発症した人では、適切な抗凝固療法のうえでの正常洞調律への復帰が試みられます。ASD閉鎖術後は6ヵ月間は抗血小板薬による治療が行われます。心房細動や脳梗塞を合併した人では抗凝固療法が適切な薬物量で継続となります。
ASDの閉鎖術は右心室・右心房の拡大を生じるような有意な短絡を認める人では、心房不整脈、運動耐容能の低下、肺高血圧の進行、心不全の発症などを予防する目的で、その人に症状がなくても勧められます。ASDの閉鎖術には外科的閉鎖術と経皮的なデバイス(欠損孔を閉鎖する用具を用いて非開胸で行う)術があり、どちらかの方向で治療を行うことになります。
外科的閉鎖術は従来治療の基本でしたが、手術による30日死亡が通常1%以下ではあるもののゼロではありません。ただし長期的な生命予後は良好です。一方、デバイスの進歩により現在では二次孔欠損型の多くの人で、カテーテル治療での経皮的なデバイス術が可能となってきています。重篤な合併症発生率も1%以下で、わが国では手技に伴い死亡された人は2005〜2024年まで報告されておらず、安全な治療となっています。したがってASDのある人の欠損孔の状況や合併症などが考慮され、両者のうちどちらかによる治療が選択されます。
ASD閉鎖術後の成人に対するフォローアップとしては、肺高血圧、心房不整脈、右心室機能低下/左心室機能低下、三尖弁逆流/僧帽弁逆流などを合併している人では1年に1度のフォローアップが行われます。またデバイス閉鎖術実施後の人では、1ヵ月、数ヵ月、1年後、以降年に1回の定期的なフォローアップが行われます。
以上、今回はASDに関して概説しました。
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