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お知らせ
冠動脈疾患 家族性高コレステロール血症との関係・治療
家族性高コレステロール血症(FH)は、常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる遺伝性代謝疾患です。高LDL-コレステロール(LDL-C)血症、アキレス腱肥厚をはじめとする腱黄色腫・皮膚結節性黄色腫、早発性冠動脈疾患(CAD)を3主徴とします。
FHの人は生下時から高LDL-C血症が持続し、若年時から冠動脈硬化症の進展を認めるため、FHは単独でCADのリスクがきわめて高い疾患です。未治療の男性では30〜50歳、女性では50〜70歳の間に心筋梗塞、狭心症などのCADを発症することを多く認めます。実際、わが国の急性冠症候群を発症した人に占めるFHの割合は全体で2.7〜5%と、一般人に占める割合である約0.3%よりも著しく高いです。より若年の人では8%前後ときわめて高いことが報告されています。
他にも未治療のFHのヘテロ接合体(両親の一方がFHでもう一方はFHではない)の人ではCADの発症リスクが約13倍高いことや、非FHの人よりも15年以上早くCADを発症する(スタチンによる治療で発症を遅らせることができる)ことが報告されています。したがって高LDL-C血症の人はFHの可能性があることを常に念頭に置かれ、早期の診断と適切な治療をされることが肝要です。
日本においても他国と同様に約300人に1人という高頻度でFHのヘテロ接合体の人が存在し、40万人以上の人がいることが推定されています。しかしその診断率は低いことが予想されており、その向上は喫緊の課題です。FHの診断基準(成人・15歳以上)は以下となります。
1.高LDL-C血症(未治療時のLDL-C値180mg/dl以上)
2.腱黄色腫(手背・肘・膝等またはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫
3.FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第一度近親者)
ここで2.のアキレス腱肥厚はX線撮影により男性8.0mm以上、女性7.5mm以上あるいは超音波検査により男性6.0mm以上、女性5.5mm以上で診断されます。皮膚結節性黄色腫は眼瞼黄色腫は含まれません。また3.の早発性冠動脈疾患は男性55歳未満、女性65歳未満で発症した冠動脈疾患とされます。そして1.2.3.の2項目以上を満たす場合にFHと診断されます。また2項目以上を満たさない場合でも、LDL-Cが250mg/dl以上の場合はFHが強く疑われます。皮膚・腱黄色腫と家族歴の両方を満たす人はLDL-C 160mg/dl以上で「FH疑い」と診断されます。
15歳未満の小児はLDL-C値と家族歴の2項目で診断されます。糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、肥満、薬剤性でも続発性にLDL-Cの高値を示すことがあり、それは診察時に医師により鑑別されます。
FHヘテロ接合体(成人:15歳以上)の人はCADリスクがきわめて高く、一次予防における発症リスクは非FHの人の二次予防に相当すると考えられています。したがって、一次予防のFHヘテロ接合体の人のLDL-Cの目標値は100mg/dl未満が望ましいとされています。二次予防のFHヘテロ接合体の人では、さらに高リスクと考えられ、LDL-Cの目標値は70mg/dl未満とされています。そのためにFHの人においても生活習慣の改善として適正体重の維持や禁煙、食生活の改善などは重要です。運動療法については、開始前に動脈硬化のスクリーニングをされることです。
FHヘテロ接合体の人では生活習慣の改善のみではLDL-Cの目標値に到達することは困難なため、診断と同時に薬物療法が行われます。第一選択薬は脂質低下薬であるスタチンの服用になります。スタチンはCADの発症を遅らせます。スタチン内服が増量され、最大用量となっても目標値への到達が困難な場合は、それ以外の脂質低下薬の内服・注射の併用が必要となります。それらによる治療で約60%のLDL-Cの低下効果が認められることが報告されています。これらの脂質低下療法でLDL-Cが目標値に達しない人は、FHホモ接合体(両親ともFH)と考えられます。
またCADの二次予防の人で、生活習慣の改善とこれらの厳格な薬物療法でも総コレステロール値が250mg/dl以下に低下しない人の場合は、LDLアフェレシス(血液を体外に引き出し、特殊なフィルターでLDL-Cを直接吸着・除去して体内に血液をもどす血液浄化療法)を行うことが考慮されます。
FHホモ接合体の人はCADの発症リスクがヘテロ接合体の人よりもさらに高いため、できるだけ速やかなLDL-C値の低下が重要で、そのための治療が必要です。一次予防のLDL-Cの目標値は100mg/dl未満、二次予防の目標値は70mg/dl未満ですが、治療を受けても達成できないことも多く認めます。
FHホモ接合体の人も生活習慣の改善(適正体重の維持、禁煙、食生活の改善など)は治療の基本となります。運動療法はCADや心臓弁膜症(特に大動脈弁狭窄)、大動脈瘤などにすでに罹患されている場合もあるために、治療の開始前にこれらのスクリーニングが必要です。薬物療法はヘテロ接合体の人より積極的かつ迅速なLDL低下療法が必要で行われます。しかしホモ接合体の人では既存の薬物療法のみではLDL-Cの目標値に到達できないことが多く、しばしば1〜2週間に1度のLDLアフェレシスによる治療が必要となります。
小児(15歳未満)ではLDL-C目標値は140mg/dl未満ですが、生活習慣の改善や薬物療法ではその達成が困難な場合が多く、早発性のCADや心臓突然死の家族歴、糖尿病などを合併している場合はより積極的なLDL-C低下治療が必要でかつ実施されます。
妊娠を希望するFHの女性は、FHのホモ接合体の人はもちろんヘテロ接合体の人も、安全な妊娠の継続・出産、また妊娠の計画を行うためには、妊娠前に動脈硬化の評価(頸動脈エコーなど)が必要で重要です。妊娠中は特にFHホモ接合体の女性ではLDLアフェレシスの実施が望ましいとされています。
以上、今回はFHとCADの関係およびFHの治療について概説しました。
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