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お知らせ
心不全と電解質(血清カリウム、ナトリウム、クロール)異常
心不全の人は各臓器の機能低下に加えて、多数の薬剤を服用するために電解質異常を起こしやすくなります。心不全の人でよく遭遇する電解質異常としては、血清カリウムの異常、血清ナトリウム異常、血清クロール異常、血清マグネシウム異常があります。特に血清カリウム値と死亡リスクの間にはU字型の非線形の関係が認められ、高カリウム血症、低カリウム血症はともに死亡リスクの上昇と関連し、血清カリウム値が4〜5mEq/lで死亡リスクは低いことは知られています。
各々について概説していきます。
◎高カリウム血症:高カリウム血症は通常血清カリウム値>5mEq/lもしくは>5.5mEq/lとして定義されます。一般的には軽度(>5.0〜<5.5mEq/l)、中等度(5.5〜6.0mEq/l)または重度(>6.0mEq/l)に分類されます。心不全の人における高カリウム血症の発生率は高く、慢性心不全の人を1年間追跡した研究では、最大40%に高カリウム血症が認められました。高カリウム血症は不整脈や入院、死亡の発生リスクの増加との関連が指摘されています。その場合心不全時に心不全の人に使用する薬(RAAS阻害薬:血清カリウムを上昇させる事がある)の過少投与(不充分な投与量や投与期間)につながることが多いです。その一方で、心不全の人における高カリウム血症のためRAAS阻害薬の減量または中止は、その後の心血管疾患発生リスク上昇と関連するという報告があり、またRAAS阻害薬の過少投与自体、高カリウム血症を合併した心不全の人の生命予後不良因子である可能性も示唆されています。したがってRAAS阻害薬内服中の心不全の人に対しては、血清カリウム値や腎臓の機能のモニタリングが行われ、高カリウム血症を認めた場合はその原因の検索に加えて、カリウム吸着薬(血液中のカリウムを腸管の中で吸着・結合し、便と一緒に体外へ排泄する薬剤)などの使用により、RAAS阻害薬の投与量や投与期間が最適化されることが期待されます。(RAAS阻害薬の減量・中止とカリウム吸着薬の使用の優先順は定まった見解はない。血清カリウム値に応じた対応が推奨される)
◎低カリウム血症:低カリウム血症は通常血清カリウム値<3.5mEq/lとして定義されます。慢性心不全の人では、低カリウム血症は不整脈、突然死、総死亡率の上昇と関連します。低カリウム血症を認めた場合、原因の検索は重要ですが、心不全の人で最も多い原因は薬剤性(ループ利尿薬や降圧利尿薬であるサイアザイドの使用)です。なお低カリウム血症の人では40〜60%で低マグネシウム血症を合併するとされており、低マグネシウム血症を補正しないと、低カリウム血症が治療抵抗性となりうるため、血清マグネシウムも同時に測定することが重要です。心不全の人の低カリウム血症に対する治療は、原因の精査を行ない、そして心不全の悪化としての各臓器の血流のうっ血が十分に解除されていれば、利尿薬の使用減量が考慮され、そして血清カリウム値上昇作用もあるRAAS阻害薬の開始または増量使用が行われます。これらの薬剤を開始・増量しても低カリウム血症が持続する場合、または低カリウム血症による心電図の異常やそれによる筋力低下など早急なカリウムの補正が必要とされる場合は、経口カリウム製剤の使用やカリウム製剤の静脈注射が行われます。
◎低ナトリウム血症:通常血清ナトリウム値<136mEq/lとして定義され、一般的に軽度(130〜135mEq/l)、中等度(125〜129mEq/l)、または重度(>125mEq/l)に分類されます。血清低ナトリウム血症は急性心不全で入院した人の約20〜30%に認められ、また入院後に低ナトリウム血症を新規に発症する人が約15〜25%に認められます。低ナトリウム血症は心不全入院や死亡リスク増加と関連します。低ナトリウム血症の原因は生体内の心不全の人の代謝(複雑なため割愛)や薬剤性などの複合的な要因の関与が考えられます。バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタン)はこの代謝経路をブロックし、血清ナトリウム濃度を上昇させます。急性心不全の人における研究では、トルバプタンの使用は生体の各臓器のうっ血症状は改善しましたが、長期的な生命予後は改善しませんでした。ほかの研究でもほぼ同様の報告がされており、長期的なトルバプタンの使用での生命予後の改善は不明です。
◎低クロール血症:通常血清クロール値<96mEq/lとして定義されます。心不全の人では低クロール血症は低ナトリウム血症と独立した生命予後予測因子であり、総死亡率の上昇と関連します。低クロール血症はRAAS系の亢進やループ系利尿薬の応答を低下させます。炭酸脱水酵素阻害薬(アセタゾラアミド)はクロールの再吸収を亢進させ、利尿作用を呈します。急性心不全の人でアセタゾラアミドを使用した研究では、各臓器の体液滞留に伴ううっ血の短期間の改善は認めましたが、生命予後の改善効果に関しては現在定まってはいません。
以上、今回は心不全と電解質異常に関して概説しました。
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