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家族性心房細動

心房細動(AF)は、臨床でもっとも一般的にみられる不整脈の1つであり、高齢化社会においてその有病者数は増加しています。また脳卒中や心不全などの合併症リスクを増大させる重要な不整脈です。

AFの発症には、心房筋の肥大、線維化などの構造的変化や、心房における活動電位の持続時間・伝導障害といった電気生理学的な変化が関与します。AFの発症には、加齢、高血圧、肥満、アルコール摂取、器質的な心臓疾患などの多くの危険因子が関与する一方で、遺伝的素因も重要な役割を果たすことが明らかとなっています。AFの遺伝的な背景を理解することは、将来AFを発症する高リスクな人を早期に同定できる可能性があり、その疫学的な知見および遺伝学的な研究は進んでいます。

疫学では、おもに第一度近親者がAFである場合は、AFの発症リスクは総じて2〜3倍に上昇するとされています。フラミンガム研究では、AFの人の約30%に家族歴があり、AFの人の家族における発症リスクは、第一度近親者は1.8倍、親子双方が75歳未満では3.23倍と報告されています。アイスランドやスウェーデン、台湾の研究でも第一度近親者は1.8〜2倍、若年でのAF発症家系では約5〜8倍であったと報告されています。デンマークの双生児の研究では、一卵性で12%、二卵性の双生児では22%の発症リスクが示されています。生命予後に関しては、多くの研究でAF発症後の主要な心血管疾患の発症や死亡、血栓塞栓症の発症はAFの家族歴の有無で有意な差はなく、AF発症後の生命予後を悪化させる明確な証拠も家族歴の有無では認めるにいたっていません。ただし心筋症の一部など器質的な異常をともなう病態では、血栓症リスクが高く、注意を要します。

遺伝的背景では、AFの多くは多因子遺伝子の関与より発症しますが、単一の遺伝子の異常が主要因となる家族性のAFが一部に存在します(単一遺伝子異常の遺伝子名は略)。しかし60歳以下や若年の人では単一の遺伝子疾患としてのAFは限定的と考えられています。また大規模な欧州の研究では、AFは多数の遺伝子が相互に関与して発症する疾患であることが示されています。

診断は、家族性AFでも非家族性AFと基本的には同じ診断となります。しかし家族性AFの人はその家族歴でのAFの有無は重要な診断の参考所見となります。また家族性AFの人(または病的な変異が比較的同定されやすい45歳以下で早期にAFを発症した人)では、遺伝性の不整脈や心筋症に合併することがあるため注意が必要です。たとえばAFの背景にブルガダ症候群などがある場合は、家系内の突然死の家族歴の有無の周知は治療の際に非常に重要となります。さらに肥大型心筋症や拡張型心筋症に合併することもあるため、心エコーなどの画像による診断・評価も必要です。しかし家族性AFの診断基準は確立してはいません。したがって今まで記したように、AF罹患率が低い60歳未満でのAFの発症や、家系内に若年発症のAFの人が複数いる場合は、家族性AFをより考慮するということになります。

治療はAFの基本的な治療である薬物治療およびカテーテルアブレーションを主軸とした非薬物療法については、家族性AFと非家族性AFで違いはありません。しかし家族性AFの人では、先に記したように遺伝性の不整脈や心筋症などの基礎心疾患があることがあり、薬物療法は基礎心疾患を考慮した適切な薬物が選択されることになります。

以上、今回は家族性心房細動について、その概略を記載しました。