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お知らせ
がん 静脈血栓塞栓症との関連
がん患者さんにおける静脈血栓塞栓症(VTE)の発症率は一般人口に比べ高いことは以前より知られており、がん治療中における重大な合併症であるとともに、生存期間の悪化と関連しています。
VTEの発症率は近年上昇傾向にあり、膵臓、胃、原発性脳腫瘍がもっとも高いとされています。人種差に関しては米国の調査によると、アジア人種における成人がん関連VTE発症率は、他人種と比較して低いことが報告されています。わが国における固形がん患者さんのVTE発症率は3.3%〜5.9%と報告されていますが、多くは症状のない体の遠位部に発症した深部静脈血栓症(DVT)のみであり、偶発的に発症した人が多いことが示唆されます。
がんが活動性の場合はVTE発症の危険因子となりますが、がんが治癒した人ではVTE再発のリスクは高くなく、がんでない人と変わらないことが示されています。ここでいうがんの活動性とは @6ヵ月以内にがんと新規に診断された場合 A6ヵ月以内にがんの治療(手術・化学療法・放射線療法)が実施された場合 Bがんの治療を実施中の場合 Cがんが再発・局所へ浸潤する、あるいは遠隔転移巣を有する場合 D造血器腫瘍(白血病など)の人では完全な寛解を得ていない場合、と定義します。したがってがん患者さんのVTEの治療である抗凝固療法の施行及び継続するか否かの判断は、がんの既往の有無ではなく、がんの活動性の有無で判断します。
がん患者さんのVTE発症の診断に血清のD-ダイマー(凝固線溶系のバイオマーカー)が頻用されます。たしかにD-ダイマー高値のがん患者さんは非高値の患者さんと比べるとVTE発症のリスクは1.85〜1.92倍と示されています。しかしがん患者さんにおけるD-ダイマーの値は、がんの病態によってばらつきが大きくなります。したがってがん患者さんにおけるVTEの診断はKhoranaスコアなどが使用されることが多いです。Khoranaスコアの計算はがんの発生部位、血液中の血小板数、白血球数、ヘモグロビンの値(または赤血球造血因子の使用)、BMIにより点数をつけ、それによりVTEの有病率を低〜高リスクと判断します(具体的な各々の点数は略)。それを用いた日本人におけるリスク別のVTEの有病率は、低リスクは1.7%、中リスクは7.3%、高リスクは11%と報告されており、一定の有用性が期待できます。
VTEの治療は、従来日本でおこなわれた方法は、欧米でおこなわれた治療とくらべ有効性、安全性がおとるとされていました。しかし近年日本では、直接経口抗凝固薬(DOAC)がVTEに対して使用できるようになり、その使用成果が集積されています。それによると多くのDOACの使用が、欧米でおこなわれた治療法とくらべ、がん関連VTE患者さんの再発予防(有効性)およびDOAC使用による大出血(安全性)の複合結果でおとらないとの報告が出され、DOACの使用は欧米でおこなわれた治療法と同等と位置付けられました。それによりわが国のがん関連VTE患者さんのDOAC使用による外来での治療の割合は有意に増加しています。
治療期間に関しては、がん関連VTEは再発率が非常に高いため、国際的には「がんが活動している間は少なくとも6ヵ月以上の長期間の抗凝固療法を継続する」ことが推奨されています。日本における疫学的データでも同様の報告がされており、活動性がん患者さんでは、より長期の治療が望ましいとされています。一方、活動性が消失したがん既往患者さんにおける再発率は非がん患者さんと大きく変わらないため、がんの活動性がなくなった時点で治療の終了が検討できます。また、活動性がん患者さんは一般的に出血リスクも高いため、血栓リスクと出血リスクのバランス調整が難しいことも事実です。したがって抗凝固療法の継続期間は、がんの状態を含め、個別の患者さんごとに慎重に検討することが重要となります。
以上、今回はがん関連VTEに関して概説しました。
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