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高齢者喘息

高齢者喘息は、65歳以上で喘息に罹患している人のことです。わが国では、年々高齢者の人口に占める比率は上昇し、今後も上昇が見込まれています。

高齢者喘息では、喫煙、併存疾患、呼吸の生理学的変化、フレイル、認知機能や筋力の低下、薬の多剤服用(ポリファーマシー)、薬の服薬維持の不良、社会経済的な問題などにより、喘息の診断と治療に難渋することが多くなります。近年は、喘息総死亡者数に占める高齢者の割合は90%前後を推移しています。2022年においても90.5%ときわめて高率であり、特に75歳以上が喘息総死亡者数の80.6%を占めていました。今後は、喘息死亡者数を減少させるために、高齢者喘息の特徴を考慮したうえで、診断、治療、管理することが必要です。

高齢者喘息は発症時期により、若年期に発症して長期間にわたり持続している早発型と、成人期に発症した遅発型に大別されます。病型の特徴は下記となります。

早発型 遅発型
発症年齢 若年期 中長期以降
罹患年数 長い 短い
喘息家族歴 多い 少ない
鼻炎合併 多い 少ない
COPD合併 少ない 多い

早発型は2型炎症(血液・喀痰中の好酸球数が多い。呼気中の一酸化窒素の濃度が高いなど)、アレルギー性鼻炎の合併が多く、また喘息の罹患年数が長い人に、呼気の気流の閉塞が強く、コントロール(喘息の)が不良な人がみられます。遅発型では、喫煙、いびき、鼻炎、副鼻腔炎症状、体重増加、肥満が喘息発症の関連因子であり、粉塵、画材、清掃用品への曝露も誘発因子となります。

高齢者喘息の診断では、高齢者は呼吸困難感の自覚に乏しく、また症状に個人差が大きくなります。さらにフレイルや認知機能の低下により、肺機能検査での呼気努力が不充分となるなど、喘息の診断が困難となることがあります。そのため、高齢者に多い心不全、貧血、胃食道逆流症などの慢性の疾患が喘息と誤診断されることがあり、注意が必要です(胸部X線、心電図、心エコー検査、血液検査などが心・血管等の障害との併存・鑑別に有効となる)。

また高齢者では、他の年齢層に比べてACO(喘息とCOPDのオーバーラップした疾患)が多いです。喘息を対象とした場合、ACOの有病率は3.2〜54.1%とされ、COPDを対象とした場合、ACOの有病率は13.0〜55.7%とされます。喫煙歴のある高齢者喘息ではCOPDの併存の可能性を考え、また症状の変動や安静時に症状を認めるCOPDでは喘息の合併を考えます。

高齢者喘息の治療では、高齢者においても、基本的な喘息の病態は気道の慢性炎症であることは他の年齢層と同じです。したがってICS(吸入ステロイド薬)が長期管理における第1選択薬であることは変わりません。しかし、加齢に伴い、吸気時の気流の低下、デバイス(吸入装具)を操作する手指の筋力の低下、認知機能の低下などにより、吸入手技の不良の率は高まります。したがって吸入手技の可否、操作手順の理解度を個々の人で確認し、その背景に則したデバイスを選択することが重要となります。そして喘息コントロールが不良な場合は、吸入の手技と吸入が怠ることなくできているかを確認したうえで、デバイスの変更や薬剤の追加を考慮する必要があります(ICS以外の高齢者喘息の薬剤の選択・注意点は略)。

高齢者喘息においても、症状のコントロール、増悪リスクの回避、併存症のコントロールが重要です。認知症やうつ病が併存する場合には、喘息の長期管理の必要性に対する認識が乏しくなるため、規則的な吸入率(アドヒアランス)が低下し、喘息の増悪を来しやすくなります。アドヒアランスの低下に対しては、配合剤や1回1回の吸入製剤の導入が考慮されます。

薬物治療の自己管理が困難な人では、介護する人が吸入の補助を行うことで喘息の増悪頻度の低下や呼吸機能の改善が可能となります。したがって、高齢者の身体的要因、心理的要因、認知機能などを多面的に考慮しながら、個々の人のレベルに合致したていねいな吸入の指導、介護、ケアが必要となるのです。

以上、今回は高齢者喘息を概説しました。