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CKDの人 疼痛時の鎮痛薬の使用・注意点

成人の慢性腎臓病(CKD)の疼痛に関する調査によると60%の人が疼痛を有し、41%の人が何らかの鎮痛薬を使用しているとされています。しかし、長期的な使用に関し安全性が確立されている鎮痛薬はありません。また腎機能障害に伴う薬物の代謝速度の低下がみられるため、鎮痛薬の血液中の濃度の上昇を招きやすくなります。そのためCKDの人はその服薬量・服薬期間を検討する必要があります。今回はCKDの人の非がん性慢性疼痛に対する鎮痛薬の使用時の注意点に関して記載します。

  1. 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):NSAIDsは疼痛の発現増強因子(プロスタグランジン)の産生を抑制し、鎮痛効果を発揮します。しかし消化管出血や鎮痛薬として使用しない低用量アスピリンを除く多くのNSAIDsは、心筋梗塞・脳卒中といった心臓血管疾患発症のリスクがあり、その使用(服用)は最小限にとどめることが望ましいとされています。さらに腎臓関連合併症である腎臓の糸球体血流の減少や尿細管細胞への毒性などを生じ、それにより急性および慢性の腎機能障害、高カリウム血症、低ナトリウム血症、体液貯留、高血圧の原因となりえます。そしてNSAIDsの使用量の増加およびCKDの機能低下の進行によりその発生リスクが増大する可能性があります。したがってeGFR(推算糸球体濾過量・腎臓の機能)<30mL/分/1.73u(腎臓機能の高度な低下)の人およびレニン・アンジオテンシン阻害薬(高血圧の薬)、利尿薬などを服用中の人はNSAIDsの服用はさけ、eGFR<60mL/分/1.73u(腎臓機能の軽〜中等度の低下)の人では継続的な服用をさけることが提案されています。したがってNSAIDsを服用する際は併用して服用している薬に注意するとともに、できる限り短期間の服用にとどめ、常用しないことが望ましいです。
  2. アセトアミノフェン:アセトアミノフェンは鎮痛作用を有するものの、糸球体血流は減少させません。このため腎臓の血流やeGFRの減少している人では鎮痛薬としてNSAIDsよりアセトアミノフェンが使用されています。かつて体内でアセトアミノフェンとなる薬剤が使用され、その長期服用時に腎臓の間質の障害や腎臓の乳頭壊死が報告されました。しかしその薬剤が使用停止となって以降、腎臓の乳頭壊死の報告は減少しています。しかしアセトアミノフェンの他剤との併用や常用した場合の長期安全性に関する研究はなく、その良否は明確には示されていません。
  3. ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン):ノイロトロピン(商品名)は腰痛症、頸肩腕症候群、帯状疱疹後神経痛に対し、わが国では古くから使用されています。CKDの人に対する有益性を評価した質の高い臨床研究は存在しませんが、神経障害性疼痛に対する第2選択薬として位置づけられています。したがって標準治療で改善しない疼痛に対して、その使用が考慮されます。
  4. ガバペンチノイド(神経障害性疼痛やてんかんの治療に使われる薬):ガバペンチノイドにはガバペンチン(ガバペン:抗てんかん薬)、プレガバリン(リリカ)、ミロガバリン(タリージェ)が含まれます。これらの薬剤は浮動性めまいや傾眠といった中枢神経に対する副作用が起こりやすく、その発現率を低下させるため、少量から服用を開始し、漸増する(用量調整を行う)ことが鎮痛のコントロールのため望ましくなります。またこれらの薬剤はおもに腎臓から排泄されるため、腎臓の機能にあわせた用量調節が必要です。ミロガバリンは、神経障害性疼痛にかかわる選択性がプレガバリンよりも高く、中枢神経に対する副作用が少ないことが予測されます。また透析患者さんを対象としたガバペンチンとプレガバリンの研究では、末梢神経痛に対する効果は同等であったと報告されています。
  5. オピオイド(モルヒネなどの麻薬や類似化合物の総称):オピオイドは慢性疼痛に対して保険診療上の適用となっているものがいくつかあります。なかでもモルヒネ、フェンタニル、オキシコドンはオピオイド鎮痛薬(強度)に該当しますが、その使用・服用で依存・乱用に至ることがあり、注意が必要です。モルヒネはその代謝産物が腎臓で排泄されるため、CKDの人では体内蓄積が起こりやすく、呼吸抑制を含む有害事象の発生リスクが高いと推定されています。また慢性疼痛鎮痛薬・止痢薬・鎮静薬として使用されるコデイン、ジヒドロコデインはモルヒネの誘導体であり、そして市販薬に含まれることがあるために、その使用・服用には注意が必要です。トラマドール、トラマドール・アセトアミノフェン配合錠はCKDの人では血液中の薬の成分濃度が半分になる時間(半減期)が最大で1.5倍になるため、用量の調整が必要であり、忍容性の観点から少量からの使用・服用の開始が必要とされています。さらに慢性背部痛を有する成人の人のトラマドールの服用に関する研究では、トラマドールの代表的な副作用である嘔気、便秘、傾眠は服用しなかった人と比較して高い頻度で出現を認めたと報告されています。CKDの人では血液中の同薬の成分濃度の上昇により、さらに高い頻度で副作用を呈する可能性があり、その服用・使用には慎重な考慮が必要です。一方ブプレノルフィンはおもに肝臓で代謝され、胆汁中に排泄されるため、腎臓の機能に応じた用量調整は不要です。またCKDの人を対象とした研究では、モルヒネ換算で50〜60mg/日以上の継続的なオピオイドの使用・服用で死亡(約1.9倍)・入院(約1.4倍)の増加が示されており、オピオイドの使用・服用の量・期間には注意が必要です。
  6. 抗てんかん薬・抗うつ薬・抗不安薬・中枢性筋弛緩薬:これらの薬剤も鎮痛薬として使用されます。そして神経障害性疼痛に対する使用・服用は第1選択薬となっています。しかしこれらの薬剤のCKDの人に限定した効果や副作用を検討した研究・試験は実施されていません。したがってその使用・服用による詳細は不詳と考えます。

以上、今回はCKDの人の鎮痛薬の使用・その注意点などに対して記載しました。