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お知らせ
睡眠呼吸障害 不整脈との関連・治療
正常睡眠において、器質的心疾患を伴わなくても徐脈性不整脈を認めることはまれではありません。洞徐脈(心拍数50未満の徐脈)は睡眠中に起こる徐脈性不整脈のなかでもっとも頻度は高いものですが、洞停止(心臓が数秒間拍動を止めること)など他の徐脈性不整脈も睡眠中に認められます。これらは若年者やアスリートでとくに頻度が高くみられ、中高年になるにつれて低下するといわれています。
睡眠中の徐脈の機序として、ノンレム睡眠における交感神経活性減弱と副交感神経活性亢進が提唱されています。睡眠中の徐脈の多くは生理的な反応であり無症候性であるため、治療の介入は必要ありません。アメリカでは睡眠中に生じる洞徐脈や一過性の洞停止などの徐脈性不整脈に対して、ペースメーカの植込みを行うべきではないとされています。
睡眠呼吸障害(SDB)を有する人では、おもに無呼吸発作中に徐脈などの不整脈を生じる頻度が高いです。徐脈の後に頻脈をきたす徐脈頻脈の人の典型的なパターンとしては、無呼吸発作時に徐脈となり、無呼吸発作の終了時に頻脈や高血圧となることが知られています。SHHS(睡眠心臓健康調査)では、SDBを有している人は、そうでない人とくらべると心室期外収縮や心房細動が多くみられました。一方で、徐脈性不整脈に関しては有意な差はなかったと報告されています(これに関しては調査した人の平均年齢が71歳と高く、自律神経活動の変動が減弱していた可能性が示唆されている)。
睡眠時無呼吸発作に伴う夜間の徐脈性不整脈を有する人は無症状であることが多く、また日中に徐脈を呈することはまれです。無呼吸発作時に洞停止を有する15人の人に精密検査を行ったところ、8割で洞機能は正常であったことも報告されています。したがって、SDBに伴う徐脈性不整脈を呈する人では、ペースメーカ植込みを行うよりSDBに対する治療が優先されます。
SDBを呈する人における夜間の睡眠に関連した徐脈性不整脈の頻度は、SDBに対する治療により劇的に減少します。したがって、夜間の徐脈を認める人におけるSDBのスクリーニング(昼間の眠気などの症状を聞くことや、SDBが疑われる人に対する精密検査)や、OSA(閉塞性睡眠時無呼吸)を合併している睡眠中の徐脈性不整脈を呈する人におけるOSAの治療(CPAPや減量すること)が推奨されることになります。
また、ペースメーカ植込みをおこなった人の研究では、SDBの症状は25%にしか認めなかったものの、39%の人で睡眠時無呼吸の検査(PSG:終夜睡眠ポリグラフ検査)によりSDBと診断され、29%の人は重症でした。したがって、ペースメーカ植込みを検討されている人はSDBの高リスク群であり、たとえ無症候であってもSDBのスクリーニングをされることが推奨されます。
SDBにおける頻発性不整脈では、治療の介入を必要としない無症状の心房期外収縮・心室期外収縮から、心臓突然死につながる致死性不整脈までさまざまなものがあります。また、心房細動のような不整脈自体の緊急性はないものの、心不全や脳梗塞の発症のリスクが高まり、正確な診断と適切な治療が求められるものもあります。そしてSDBは生活習慣病をはじめとする多くの併存する疾患と関連があり、これらは相加相乗的に不整脈発生に関与するため、不整脈のみの治療では不充分なことが多く、包括的な治療を必要とします。
SDBに合併する上室性不整脈として心房細動があります。心房細動の人にSDBを併発する頻度は研究報告により差はありますが、21〜74%と高いです。とくに心房細動に対してカテーテルアブレーションをうけた人のわが国での研究では、AHI(無呼吸低呼吸指数)が15以上の人が全体の53.3%と、高率にSDBを併存することが示されました。一方で、SDBの人に心房細動を合併する頻度は4.8%です。しかし、SDBが心房細動を新規に発生するリスクは経時的に増加するため、罹病期間が長くなるほどその心房細動の合併頻度は高くなります。お互いに合併する疾患であり、SDBの人は心房細動の併発リスクを評価され、また心房細動の人はSDBのスクリーニングを検討されることが重要です。
心房細動は夜間の正常な呼吸状態にくらべて、無呼吸中もしくはその直後では発生リスクが17.9倍高いことが報告されています。高齢者とくらべて若年者の発作性心房細動は夜間に多いですが、心房細動の発症のリスク因子がなく、心房の構造的変化がみられない状況でも、OSAによって心房細動を発症する可能性があります。比較的若年発症の心房細動の人で、高血圧や糖尿病など明らかなリスク因子を有さない人においても、SDBのスクリーニングを行うことは治療方針を決めるうえで重要となります。
OSAに併発する心房細動は抗不整脈薬による治療効果が少なく、有症候性の心房細動の人では発作性・持続性心房細動ともにカテーテルアブレーションが治療選択として挙げられます。しかし、OSAに対する適切な治療がおこなわれないと、心房細動の再発率は有意に高くなります。OSAを合併した心房細動の人にCPAP治療が行われると、心房細動が37%低減したと報告されています。また、禁煙や体重管理も心房細動発症予防に有効であるため、CPAPなどでOSAの治療とともに包括的な治療を行われることが重要とされます。心房細動は脳梗塞や全身塞栓症の発症リスクが増加するため、リスクに応じて抗凝固療法の導入も必要となります。
SDBの人における心室性不整脈・突然死発生を検討した報告は少ないですが、間欠的な低酸素状態は交感神経の活性を引きおこし、心室性不整脈発生に寄与します。心臓突然死に関する研究では、睡眠中の最低酸素飽和度は心臓突然死の発症リスクの独立したリスク因子(10%低下ごとに14%のリスク増加)であることが示されました。AHIは独立したリスク因子とはなりませんでした。
OSAと心臓突然死は、年齢、高血圧、心不全、糖尿病、脂質異常症、冠動脈病変、肥満といった共通するリスク因子を有しており、とくに心不全や冠動脈病変の併存がOSAの人の心臓突然死に関与していることが推定されます。心臓突然死の時間帯は、OSAの人では真夜中12時から朝6時までのあいだの突然死発生リスクが、一般の人と比べて2.57倍高いと報告されています。原因として上記の関与が示唆されています。しかし、冠動脈病変など心筋の虚血のない人でも突然死は生じており、酸化ストレス、低酸素、自律神経障害などの複合的な要因の関与も考えられます。致死性心室性不整脈、それによる心臓突然死に対するCPAP治療による予防効果はありとする報告、なかったとする報告が混在しており、予防効果は明らかではありません。今後の課題といえます。
以上、今回はSDBと不整脈との関連・治療に関して概説しました。
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