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高血圧(閉塞性睡眠時無呼吸と合併する) 特徴、治療

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と高血圧は合併率は高いが、OSA自体が高血圧の成因となりえます。年齢やBMI(肥満指数)とは独立して無呼吸低呼吸指数(AHI)の増加が将来の高血圧の発症リスクになることが示されているのです。OSAの高血圧発症のリスクは若年の人では大きく、高齢者ではその影響は減少します。青年期の人を対象とした研究では、睡眠時間の短縮(5〜6時間未満)が2.5倍、睡眠効率の低下(85%未満)が3.5倍と高値血圧(130〜139/80〜89mmHg)発症のリスクとなっており、高血圧の発症リスクとして睡眠の量と質が重要であることが示唆されます。
わが国においても、高血圧ならびに高値血圧は脳卒中などの心血管疾患のリスクとなっていますが、その規定因子としては肥満があります。肥満の影響は若年の人で強く、肥満により中等症〜重症のOSAの発症リスクは増加し、逆に肥満の減量によりOSAの発症リスクは抑制されます。したがって、若年期から適正体重の維持に努めることが、OSAに関連した高血圧の発症抑制になると考えられるのです。
OSAで発生する高血圧は、神経原性高血圧ともいわれ、血圧変動の強い夜間高血圧を特徴とします。夜間高血圧は、将来の心不全や動脈硬化性心血管疾患の発症リスクの高いことが知られています。また、睡眠時間の短縮も、夜間高血圧と独立して心血管疾患のリスクとなります。
OSAの夜間無呼吸発作の後半から無呼吸が解除される時間に一致して著明な血圧上昇(20〜100mmHg、個人差がある)が発生し、この上昇が夜間発症の心血管疾患の誘因になると考えられています。またOSAは、治療抵抗性高血圧(以前のWebを参照してください)の原因となります。治療抵抗性高血圧の80%以上にAHI≧10のOSAが認められた、OSAが50歳未満の高血圧の人の血圧コントロール不良の独立した規定因子となるなどの報告があります。とくに降圧薬の就寝前服用などの夜間・早朝高血圧に対する特異的な行為をされても、家庭血圧で測定した早朝血圧が持続して高値(135/85mmHg以上)を示す治療抵抗性高血圧の人ではOSAを疑うとされています。
OSAの高血圧の特徴を上記などを踏まえ、記載します。@治療抵抗性高血圧 A仮面高血圧(以前のWebを参照) B夜間高血圧 C早朝高血圧 D心拍数増加を伴う高血圧 E若年者の拡張期(優位)高血圧 さらに夜間尿、夜間呼吸困難、夜間発症の心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、急性大動脈解離、心室性・上質性不整脈など)の既往や正常血圧にもかかわらず心臓肥大(左心室の肥大)などを有する人、また24時間施行した血圧(ABPM)が正常(130/80mmHg未満)にコントロールされていても臓器障害が進行する人などもOSAの特徴ではないが、OSAを疑うとされています。
OSAに合併した高血圧の治療では、まずは生活習慣の修正は重要です。肥満とOSA、高血圧は密接な関連があるからです。肥満でOSAの人は減量と運動がもっとも有効です。またアルコールと睡眠呼吸障害は高血圧の明確なリスクとなりますから、節酒は重要です。禁煙も重要となります。
次に、持続的陽圧呼吸(CPAP)による治療は、中等症・重症OSAを合併する高血圧の人では推奨されます。CPAP治療により、多くのOSAの人で降圧効果が得られ、夜間の血圧の(急)上昇が低下するからです。このCPAP治療の効果には個人差がありますが、より血圧レベルの高い高血圧、未治療の高血圧、夜間高血圧、治療抵抗性高血圧などの人では、降圧効果が大きいとされています。さらに、BMI高値の人でより重症のOSA(AHI≧30)の人では、CPAPによる降圧効果は大きく認められます。ただし、CPAP治療による降圧効果はCPAP継続率が低いと乏しい場合が多く、一晩に3時間以上、そしてより長期の使用が重要となります。これに関しては、CPAP治療の一晩4時間以上の使用は、4時間未満の使用に比べてCPAP使用翌日の早朝家庭血圧が低下し、その低下度は冬期に顕著となるとの研究があります。
OSAの薬物治療では、厳格な24時間にわたる降圧効果が得られることが望ましく、とくに夜間血圧を120/70mmHg未満(夜間降圧の基準値)に抑制することが重要となります。降圧薬に関しては、明確な良好な効果が証明された薬はありません。少数例の研究では、ある種の薬の服用で診察室での拡張期血圧が有意に低下した、昼間覚醒時血圧の低下度には差はないが夜間収縮期・拡張期血圧が有意に低下したという報告はあります。また、他の薬の服用でOSAの重症度と血圧が有意に低下したという報告もあります。しかし、多くの報告ではこれらの薬の有効性には一定の見解は得られていません。したがって、OSAにおける臓器障害の抑制や肥満などの合併症に関して個別に対応し、服薬していただいているのがOSAの治療の実情となっています。
新規の薬でOSAの降圧に期待できる薬はありますが、今後の研究課題となるところが多いと考えられます。
以上、OSAと合併する高血圧に関して記載しました。

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